私たちの体は年齢を重ねるにつれて、さまざまな臓器の機能が少しずつ変化していきます。なかでも腸は、栄養を吸収するだけでなく、免疫の最前線として体全体の健康を支える重要な臓器です。
加齢にともなって腸のバリア機能が低下すると、慢性的な炎症が起こりやすくなり、炎症性腸疾患(IBD)や過敏性腸症候群(IBS)、さらには大腸がんといった疾患のリスクが高まることが知られています。
日本は世界有数の超高齢社会であり、腸の健康を維持することは多くの人にとって切実な課題です。とくに高齢者では食事量の減少や食事内容の偏りによって、必要な栄養素が不足しがちです。
そうしたなかで近年、ミネラルの一種であるマグネシウム(Mg)が腸の健康に深く関わっていることが注目されています。
今回紹介するのは、四川大学華西病院や浙江大学の研究チームが、サル、ヒト、マウスという複数の種を対象に腸内のマグネシウム濃度の変化を調べました。
さらにイギリスの大規模コホート(UKバイオバンク、約18万人)のデータを用いて、マグネシウム摂取量と腸疾患リスクの関連を明らかにした研究です。
Aging Cell誌(2026年)に掲載されたこの論文から、マグネシウムと腸の老化の関係をわかりやすくお伝えします。
記事の要点
- 腸内のマグネシウム濃度は加齢とともに低下し、この現象はサル、ヒト、マウスの3種で共通して確認された。
- マグネシウム不足は高齢マウスの腸老化を加速させ、腸炎の重症化にもつながることが動物実験で示された。
- UKバイオバンク約18万人の解析で、1日あたり334.7~420.0mgのマグネシウム摂取がクローン病、潰瘍性大腸炎、過敏性腸症候群、憩室疾患のリスク低減と関連していた。