鉄剤を飲むと、胃がもたれる、吐き気がする、便秘になる。鉄を補おうとして、かえって飲み続けられなくなる。そんな経験を持つ方は少なくありません。そこで近年、母乳や牛乳に含まれるラクトフェリンが、鉄剤よりも穏やかに鉄を届ける成分として注目されてきました。
このイメージには、研究の裏づけもあります。
妊婦を対象にした研究では、経口のラクトフェリンが鉄剤と同等以上にヘモグロビンを改善し、消化器の負担は少なかったと報告されています。穏やかで、しかも効く。鉄剤がつらい人にとって、魅力的に映る選択肢です。
では、ラクトフェリンは鉄剤の代わりになるのでしょうか。
2026年、この問いを正面から確かめた試験が、栄養学の専門誌『The Journal of Nutrition』に報告されました。
鉄欠乏性貧血を抱える女性555人を対象に、ラクトフェリンが鉄剤に引けを取らないかを、二重盲検という厳密な方法で検証した内容です。
結果は、穏やかさと効き目を切り分けて考える必要があることを示すものでした。今回は、この試験を手がかりに、ラクトフェリンの位置づけを読み直していきます。
◼️記事の要点
2026年の二重盲検試験で、鉄欠乏性貧血の非妊娠女性555人を対象に、ラクトフェリンが鉄剤に引けを取らないかが検証されました。12週後のヘモグロビン改善は鉄剤のほうが大きく、非劣性は示されませんでした。
一方、妊婦を対象にした過去の研究では、ラクトフェリンが鉄剤と同等以上に改善し、消化器の負担も少なかったと報告されています。結果が分かれる背景には、対象や用量、貧血の程度といった条件の違いがあります。
ラクトフェリンの「穏やかさ」と「貧血を治す効き目」は別の軸です。鉄剤がつらい人が選択肢を考えるときも、対象・用量・ヘモグロビンの改善幅まで見ておくことが手がかりになります。