ガラス越しの日光ではビタミンDが作れない:窓際の日差しで満足していませんか? UVBとUVAの大切な違い

ガラス越しの日光ではビタミンDが作れない:窓際の日差しで満足していませんか? UVBとUVAの大切な違い

ビタミンDは「太陽のビタミン」とも呼ばれ、骨の健康を守るカルシウムの吸収を助けるほか、免疫機能の調整やうつ・認知症のリスク低減にも関わる、体にとって欠かせない栄養素です。

食事からも摂取できますが、皮膚が紫外線を受けることで体内で合成されるというユニークな性質を持っています。

日本ではビタミンD不足が広く指摘されています。その背景には、日焼けを嫌う文化、日差しを避けるライフスタイル、そして在宅勤務の普及など、屋外に出る機会が減ったことがあります。

そんな状況でよく聞かれるのが、「窓際で日光に当たっているから大丈夫」という声です。天気の良い日に窓辺でポカポカ温まりながら日光浴をする。それはとても気持ちよく、健康的に思えます。

ところが、残念ながらその「窓際の日光浴」ではビタミンDはほとんど作られないのです。

2019年3月3日にGIGAZINEが公開した記事では、この意外な事実を紫外線の仕組みからわかりやすく解説しています。

なぜガラスが邪魔をするのか、では実際にどうすればよいのか。ビタミンDと日光の関係を正しく理解して、毎日の習慣を見直してみましょう。

◼️要点

  • ビタミンDを合成するのは紫外線のうちUVBだけだが、一般的な窓ガラスはこのUVBをほぼ完全に遮断する。ガラスを通り抜けてくるのはUVAのみで、これはビタミンDの生成に役立たないどころか、皮膚の老化を促進する有害な光線である
  • ボストン大学医学部のマイケル・ホリック教授によると、季節を問わず窓ガラスの前に座っていても人間の体はビタミンDを生成できない。ビタミンDを日光から得るには、窓を開けるか屋外に出て、直接UVBを皮膚に当てる必要がある
  • 屋外での日光浴が難しい場合は、食事からのビタミンD補給が重要になる。サケ・サバ・イワシなどの脂ののった魚、卵黄、ビタミンD強化食品などが主な供給源となる

紫外線には3種類ある:UVA・UVB・UVCの違い

太陽光に含まれる紫外線は、波長の長さによってUVA、UVB、UVCの3種類に分けられます。このうちUVCはオゾン層で吸収されてしまい、地表には届きません。地上に降り注ぐのはUVAとUVBの2種類だけです。

UVAは波長が長く(315〜400ナノメートル)、皮膚の奥の真皮層まで届きます。タンパク質を変性させ、肌の弾力を失わせ、シワやたるみなど皮膚の老化を促進する光線です。

「生活紫外線」とも呼ばれ、曇りの日や窓ガラスを通してでも届くという特徴があります。日常的に窓越しの日光を浴び続けることで肌の老化が進む原因は、このUVAです。

一方、UVBは波長が短く(280〜315ナノメートル)、皮膚の表皮層に作用します。強い日差しを浴びたときに肌が赤くなる「サンバーン(急性の日焼け)」の原因になるのはこちらです。

色素細胞がUVBに反応してメラニンを生産し、肌が黒くなるのもUVBの働きです。そして、ビタミンDの合成に関わるのは、このUVBだけです。UVAにはビタミンDを生成する作用はありません。

なぜガラス越しではビタミンDが作れないのか

問題の核心は、ガラスの性質にあります。住宅や自動車に使われている一般的なガラスは、UVBをほぼ完全に遮断する性質を持っています。UVBは波長が短いため、ガラスの素材に吸収・反射されてしまい、室内には届かないのです。

ガラスを透過してくるのはUVAだけです。つまり窓際でいくら日差しを浴びていても、受け取っているのはビタミンD生成に役立たないUVAのみ。皮膚の老化を促進するリスクだけが残る状況になっています。

ボストン大学医学部でビタミンD研究の第一人者として知られるマイケル・ホリック教授は、「それが冬であるか夏であるかに関わらず、窓ガラスの前に座っていても人間の体はビタミンDを生成できません」と明言しています。

近年普及しているUVカット強化ガラスや断熱ガラスを使用している場合は、さらにUVBの透過率が低くなるため、ビタミンD合成の観点ではより不利な状況になります。

なお、網戸については話が変わります。網戸の素材はUVBを遮断しないため、窓を開けて網戸越しに日光を浴びる場合は、ビタミンD合成の効果が期待できます。

ビタミンDの合成に必要な日光浴の量と条件

では、ビタミンDを作るために必要な日光浴はどれくらいなのでしょうか。一般的には、1日に10〜15分程度、顔や腕など皮膚を直接太陽に当てることが目安とされています。ただしこれは晴れた日の屋外の話であり、季節・時間帯・地域・肌の色によっても大きく変わります。

UVBの量は午前10時〜午後3時ごろが最も多く、この時間帯は効率よくビタミンDを合成できます。逆に冬は太陽の高度が低くUVBが大気中で散乱されやすいため、同じ時間浴びてもビタミンD生成量が少なくなります。特に北日本では冬季に日光からのビタミンD合成が難しくなる場合があります。

また、日焼け止めはUVBを遮断するためビタミンD合成をほぼ妨げます。SPF30の日焼け止めを使用するとビタミンD合成量は5%以下になるという報告もあります。これは紫外線対策を徹底している方ほど、食事やサプリメントからのビタミンD補給が重要になることを意味しています。

さらに、加齢もビタミンD合成の効率を下げます。皮膚に含まれるビタミンD前駆物質(7-デヒドロコレステロール)は年齢とともに減少し、60代では30代と比べて合成能力が約3分の1まで低下するという報告があります。高齢の方は特に、日光だけに頼らない補給戦略が必要です。

日光から摂れない場合:食事でビタミンDを補う方法

屋外での日光浴が難しいとき、あるいは冬の日照不足が続くときは、食事からのビタミンD補給が重要な選択肢になります。ビタミンDを多く含む食品として代表的なのは、脂ののった青魚です。

サケ、サバ、イワシ、サンマ、メカジキなどはビタミンDの優れた供給源です。缶詰でも含有量は大きく変わらないため、手軽に日常食に取り入れられます。

そのほか、卵黄にもビタミンDが含まれています。かつては肝油(サメなどの魚の肝臓から採れる油)がビタミンDの代表的な栄養源として使われていました。牛乳やオレンジジュース、シリアルなどにビタミンDを添加した強化食品も、欧米ではよく利用されています。

日本人の食事摂取基準(2020年版)では、18歳以上の男女ともに1日あたりのビタミンD目安量を8.5マイクログラム(340IU)としています。血液検査でビタミンDの状態を確認することもでき、心配な方はかかりつけ医に相談してみるのもよいでしょう。

窓越しでも得られるもの:セロトニンと光の効果

「ガラス越しの日光はビタミンD合成に役立たない」という事実を知ると、窓際に座ることに意味がないように思えるかもしれません。しかし、窓越しの日光にも得られるものはあります。

日光浴には、ビタミンD合成以外にも、精神を安定させる脳内伝達物質「セロトニン」の分泌を促す効果があります。

セロトニンは気分を前向きにし、意欲や活力を高めてくれるため「幸せホルモン」とも呼ばれています。不足するとうつや不眠、意欲低下につながることも知られています。

重要なのは、セロトニン分泌は紫外線ではなく「光の刺激」によるものという点です。そのためUVBが届かないガラス越しの日光でも、明るい光を目に取り込むことでセロトニンの分泌は促されます。

朝の時間にカーテンを開けて明るい光を浴びることは、ビタミンDには関係なくとも、気分や睡眠リズムを整えるうえで意味があります。

つまり、正しい理解はこうです。ビタミンDのためには窓を開けるか屋外に出ること。気分と精神の安定のためには、ガラス越しの明るい光を浴びることにも価値があります。

まとめ

ガラス越しの日光浴では、ビタミンDはほとんど作られません。ビタミンDの合成に必要なUVBは、一般的な窓ガラスによってほぼ遮断されてしまうからです。

窓を通り抜けてくるのはUVAのみで、こちらは皮膚の老化を促進する光線です。窓際でポカポカ日差しを浴びていても、ビタミンD不足の解消にはつながっていない可能性があります。

ビタミンDを日光から得るには、窓を開けるか、実際に屋外に出て直射日光を皮膚に当てることが必要です。1日10〜15分程度の屋外日光浴が目安ですが、季節・時間帯・日焼け止めの使用・年齢によってもその効果は変わります。

日光浴が難しい環境にある方は、サケやサバなどの青魚、卵黄、強化食品などからの食事補給や、サプリメントの活用を検討してみてください。

なお、窓越しの明るい光はビタミンDには役立ちませんが、セロトニンの分泌を促して気分を安定させる効果はあります。

朝に明るい窓辺に座る習慣は、心の健康という点では意味があります。正しい知識を持ったうえで、日光との賢い付き合い方を日常に取り入れてみてください。

◼️出典
GIGAZINE

◼️参考文献

*The New York Times — Does Sunlight Through Glass Provide Vitamin D?

*Holick MF. — Vitamin D and sunlight. Photodermatol Photoimmunol Photomed, 1995.

*Almutawa F, et al. Current status of photoprotection by window glass, automobile glass, window films, and sunglasses. Photodermatol Photoimmunol Photomed. 2013; 29: 65-72.

*日本人の食事摂取基準(2020年版)厚生労働省