がん治療において、手術や化学療法、放射線療法といった医学的介入の重要性は言うまでもありません。
しかし近年、治療そのものだけでなく、患者の日常的な生活環境や人間関係、身体活動といった生活の質に関わる要素ががん患者の予後に影響を与える可能性が注目されています。
運動習慣やストレス管理、社会的なつながりが健康アウトカムに寄与することを示す研究が蓄積されるなかで、ある意外な存在が浮かび上がってきました。犬です。
犬との暮らしが心血管疾患や糖尿病、喘息などの患者にとってプラスに働くことは、これまでの研究でも示されてきました。
しかし、がんの発症や生存率に対する影響については十分に調べられていませんでした。日本でもがんは死因の第一位であり続け、高齢化とともにがんサバイバーの数も増加しています。
ペットとの共生が一般的になっている日本社会において、犬との関わりが健康に及ぼす影響を考えることは、決して他人事ではありません。
このたびScientific Reports誌に発表された大規模研究は、犬との接触ががん患者の5年生存率と有意に関連しているという注目すべきデータを提示しています。
記事の要点
- 約5.5万人のがん患者データを解析した結果、犬との接触がある患者は5年全死因死亡リスクが最大64%低いことが示された。
- 犬との生活がもたらす日常的な身体活動、ストレスホルモンの低下、オキシトシンの増加、微生物多様性への曝露などが複合的に関与している可能性がある。
- 因果関係を証明するものではないが、生活環境やコンパニオンアニマルとの関係性ががん患者の予後に影響しうることを示す大規模な観察データである。