鉄、亜鉛、銅といった微量ミネラルは、エネルギーの産生や免疫機能の維持など、私たちの体にとって欠かせない栄養素です。
なかでも銅は、神経伝達物質の合成やミトコンドリアの正常な機能に深く関わっており、脳の健康を支える重要な役割を担っています。しかし近年の研究では、これらの微量元素のバランスが崩れることで、脳の健康に深刻な影響が及ぶ可能性が浮かび上がっています。
日本は世界でも有数の超高齢社会であり、認知症の患者数は増加の一途をたどっています。2025年には高齢者の約5人に1人が認知症になるとの推計もあり、予防策の確立は喫緊の課題です。
そうした中、タイの研究チームが血中の銅濃度と認知機能の低下リスクとの関連を明らかにする研究結果を発表し、注目を集めています。銅は多すぎても少なすぎても問題があり、そのバランスを保つことが脳の老化を防ぐ鍵になるかもしれません。
記事の要点
- 血中の銅濃度が高すぎても低すぎても、認知機能の低下リスクが高まることが示された。軽度認知障害(MCI)の患者と健常者を比較した結果、銅の異常値と認知機能低下の初期段階には強い相関が認められた。
- 過剰な銅の蓄積は脳内で酸化ストレスを引き起こし、アルツハイマー病の特徴であるアミロイドベータの凝集を促進する可能性がある。これにより神経細胞間の情報伝達が妨げられ、記憶力や認知処理速度の低下につながる。
- 銅の摂取量を増やすのではなく、体内での恒常性(ホメオスタシス)を維持することが重要であり、定期的な血液検査で銅濃度を把握することが、将来の認知症リスクを予測するバイオマーカーとなりうる。