水素は宇宙で最も豊富な元素であり、同時に最も小さな分子でもあります。
かつては生物学的に不活性と考えられていた分子状水素(H2)ですが、近年の研究では、細胞の損傷や炎症、慢性疾患の原因となる活性酸素種(ROS)と直接相互作用することが明らかになっています。
2,000件以上の科学論文が分子状水素を検証しており、その治療可能性に対する科学的関心が急速に高まっています。
日本でも、水素水や水素吸入といった形で健康法として話題になることがありますが、その科学的根拠については十分に知られていない部分もあります。
今回は、Molecules誌に発表された包括的なレビュー論文を中心に、分子状水素療法の臨床研究の現状をお伝えします。
記事の要点
- 分子状水素は最も有害な活性酸素種であるヒドロキシルラジカルを選択的に中和し、有益なシグナル伝達を妨げない「選択的抗酸化物質」として働く。
- 81件の臨床試験と64件のヒト対象研究の分析から、心血管疾患、がん、呼吸器疾患、神経学的損傷などで有望な結果が報告されている。
- 分子量がわずか2ダルトンと極めて小さいため、血液脳関門やミトコンドリア内部など、多くの薬剤が到達できない組織にも到達できる。