クレアチンは、筋肉の瞬発的なエネルギーを支える成分として知られてきました。その視線が、いま腸の粘膜へと広がっています。
腸管上皮は、食事成分を取り込みながら、細菌や抗原が体内へ過度に入り込まないように境界を保つ、代謝活動の盛んな組織です。この境界の維持にも、ATPを素早く補うクレアチン・ホスホクレアチン系が関わっている可能性があります。
2026年4月、学術誌『Nutrition』に、クレアチン補給と腸の健康、とりわけ炎症性腸疾患(IBD)との関係をまとめたナラティブレビューがオンライン公開されました。
潰瘍性大腸炎やクローン病で揺らぎやすい腸管バリアに対し、クレアチンがエネルギー代謝、酸化ストレス、炎症シグナルという複数の面から関わりうることを整理した報告です。
記事の要点
- クレアチンは腸管上皮の輸送体CrT1(SLC6A8)から取り込まれ、クレアチンキナーゼ/ホスホクレアチン系を介してATP再生を支えます。バリアを保つ細胞のエネルギー基盤として注目されます。
- IBD患者の結腸組織ではクレアチン輸送体や関連酵素の低下が報告され、細胞・動物モデルではクレアチンまたはホスホクレアチンがバリア機能や大腸炎指標の改善と関連しました。
- ヒトの補給データはクローン病の症例報告などに限られています。一般的な維持摂取量として広く研究される3〜5g/日に対し、IBDでの用量と臨床効果は今後の試験が焦点になります。