HIVは、いまや適切な治療によってウイルスを抑え込み、長く付き合っていける病気になりました。けれども、ウイルスがしっかりコントロールされている人でも、体の奥に残り続ける問題があります。それが、腸の傷みです。
腸の壁が傷ついたままだと、本来は外に出るはずのない細菌の成分が体内へ少しずつ漏れ出し、それが長く続く炎症の火種になります。
この慢性的な炎症は、心臓や血管の病気、認知機能の低下、代謝の乱れなど、さまざまな不調と結びつくことが知られています。ウイルスは抑えられているのに、なぜ腸の傷だけは残るのか。これは長らく解けない問いでした。
2026年5月、米テュレーン大学の研究チームがJCI Insightに発表した研究は、その謎の一端を解き明かしました。
そして興味深いことに、その鍵を握っていたのは、私たちの食卓にもおなじみのブロッコリーやキャベツといったアブラナ科の野菜に含まれる成分だったのです。
今回は、この新しい研究が見せてくれた、腸と食べ物のつながりをていねいに見ていきます。
記事の要点
- ウイルスを抑える治療を長く続けても、腸のバリアを守る免疫の働きが十分には戻らないことが、霊長類を用いたモデルで確認されました。
- その背景には、腸を守るγδ(ガンマデルタ)T細胞や自然リンパ球と、それらを動かすAHR–RORγtという信号の経路の乱れがありました。
- ブロッコリー由来のインドールという成分を1か月与えたところ、腸のバリアと免疫の働きに回復の兆しが見られたと報告されています。