クレアチンというと、ジムに通う人が筋トレ前後に飲む白い粉、というイメージが長く一般的でした。
実際、市販のスポーツサプリメントとしての歴史は長く、効果の確からしさという意味でも、世界中でもっとも研究されている栄養素のひとつといってよい立ち位置にあります。
一方で、ここ数年の研究の流れは、もう少し広いところに視線を向け始めています。脳、心臓、高齢期の身体機能、菜食中心の食生活、さらには睡眠不足下での認知機能まで。
2026年5月、米Taylor & Francis社から刊行されるレビュー本『Handbook of Creatine and Creatinine In Vivo Kinetics』に合わせて公開された記事では、製薬研究者のMehdi Boroujerdi博士が「クレアチンは筋肉のためだけのサプリメントではない」と改めて語り、その隠れた働きを総説的に整理しています。
今回はこの記事を出発点に、最近の研究で見えてきたクレアチンの全身的な側面を、ていねいに辿ってみます。
記事の要点
- 体内クレアチンの約95%は骨格筋に貯蔵されますが、残りの数%は脳・心臓・腎臓などの高エネルギー需要組織に分布し、ATP再生を陰で支えています。
- 筋力・パワー向上にとどまらず、睡眠不足時の認知機能、高齢者の筋肉量・転倒予防、菜食中心の食生活下での補給など、筋肉以外での研究知見が積み上がってきています。
- 標準的な補給は1日3〜5gを維持量として継続する形が広く用いられており、腎機能が健常であれば長期摂取でも安全性が比較的高い栄養素として評価されていますが、持病のある方は事前に専門家に相談したうえで取り入れることが推奨されます。