がん治療の分野では近年、免疫チェックポイント阻害薬をはじめとする免疫療法が大きな注目を集めています。
しかし、すべての患者さんに十分な効果があるわけではなく、腫瘍微小環境と呼ばれるがん細胞の周囲の環境が、免疫細胞の働きを妨げていることが課題となっています。
特に腫瘍の中では、がん細胞と免疫細胞が限られた栄養素を奪い合う「代謝競合」が起きており、これが免疫療法の効果を弱める大きな要因の一つとされてきました。
日本でも免疫療法への関心は年々高まっていますが、治療効果を最大限に引き出すためのアプローチはまだ発展途上です。
そうしたなか、中国・浙江大学の研究チームが発表した新しい研究が注目されています。
わずか16時間という短時間の断食が、がんの免疫療法の効果を高めるという内容で、マウス実験だけでなくヒトの患者さんでも有望な結果が確認されました。
学術誌「Cell Metabolism」に掲載されたこの研究は、食事という身近な行為が、がん治療の未来を変える可能性を示しています。
記事の要点
- 16時間の短期断食が腫瘍内の代謝環境を変化させ、がん免疫療法(免疫チェックポイント阻害療法)の効果を高めることがマウスとヒトの両方で示された。
- 断食によって腫瘍内にイソロイシンが蓄積し、これがCD8陽性T細胞のエネルギー代謝とエピジェネティックプログラムを再活性化させて抗腫瘍能力を強化する。
- 大腸がん患者を対象とした前向きコホート研究でも、断食群では終末分化型エフェクターメモリーT細胞(Temra)のクローン増殖と細胞傷害活性の向上が確認された。