最新|グルタチオンはNK細胞の免疫機能に不可欠である

最新|グルタチオンはNK細胞の免疫機能に不可欠である

〜 腫瘍・ウイルスへの免疫防御において、グルタチオンがNK細胞の活性化・代謝・細胞毒性を支える 〜

私たちの体には、生まれながらにして備わった免疫システムがあります。ウイルスに感染した細胞やがん細胞を素早く見つけ出し、直接攻撃する「ナチュラルキラー細胞(NK細胞)」は、その最前線を担う存在です。NK細胞は特定の抗原を認識する必要なく、異常な細胞を即座に排除できることから、自然免疫の殺し屋とも呼ばれています。

一方で、私たちの体内では日々、酸化ストレスが生じています。活性酸素種(ROS)と呼ばれる不安定な分子が、細胞のDNA・タンパク質・脂質を傷つけ、免疫機能を低下させます。がんや慢性感染症などの疾患環境では、この酸化ストレスがさらに強まります。

そこで注目されるのが、グルタチオン(GSH)です。グルタチオンは体内で合成される最も重要な抗酸化物質であり、細胞を酸化ダメージから守る細胞の盾とも言える存在です。サプリメントとしても広く知られるグルタチオンですが、その免疫細胞、特にNK細胞への具体的な影響については、これまで十分に解明されていませんでした。

日本でも、がんは依然として死因の第1位であり、2023年の統計では年間約38万人ががんで亡くなっています。免疫力の低下ととともに転移リスクが高まる現実の中で、NK細胞の機能を維持・強化するための知見は、がん予防・治療の両面において大きな意義を持ちます。

今回ご紹介するルクセンブルク健康研究所(LIH)らの研究は、グルタチオンがNK細胞の免疫機能を維持するうえで不可欠であることを、マウスモデルを用いて初めて詳細に示したものです。

◼️論文タイトル

グルタチオンはNK細胞を介した免疫において不可欠である

記事の要点

  • グルタチオン(GSH)は、インターロイキン-15(IL-15)によるNK細胞の活性化と代謝を維持するために必要であり、GSH合成酵素(Gclc)の欠損はmTOR・STAT5シグナル伝達・増殖・細胞毒性を障害する。
  • GSHが欠損したNK細胞は急性LCMV(リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス)感染時にT細胞の抗ウイルス応答を抑制できなくなり、結果としてウイルス制御が改善されるという逆説的な現象が生じる。
  • NK細胞のGSHは腫瘍の肺転移の制御には不可欠であるが、固形腫瘍の拒絶反応はGSHに依存しないことが明らかになった。