あなたが毎日摂取しているビタミンDの量は、本当に十分なのだろうか。「1日600IU(国際単位)を摂れば大丈夫」という公式の推奨量を信じているとしたら、残念ながらそれは大きな誤解に基づいている可能性が高い。
2014年以降、複数の独立した研究チームが、米国の栄養摂取基準(RDA)の算出に深刻な統計的誤りがあったことを明らかにした。その誤りは単なる計算ミスではなく、公衆衛生に広範な影響を及ぼしてきた、構造的な問題なのである。
IOMが設定したRDAとは何か
アメリカの医療・栄養政策において、栄養素の推奨摂取量(RDA)を定める機関として長らく権威を持ってきたのが、米国医学研究所(IOM:Institute of Medicine、現在は全米医学アカデミー)である。2010年、IOMはビタミンDのRDAを以下のように更新した。
- 70歳以下の成人:1日600IU
- 71歳以上:1日800IU
この推奨量の根拠として、IOMは「600IU/日を摂取すれば、人口の97.5%が血中ビタミンD濃度(25(OH)D)を50nmol/L(20ng/ml)以上に維持できる」と説明した。このレベルは骨の健康を守るために必要な最低限の濃度とされていた。
しかし、この前提そのものが、根本的に誤っていたのである。
記事の要点
- IOMのRDA算出に統計的誤りがあった:600IU/日というRDAは、集団の「平均値」と個人の「予測区間」を混同するという統計的ミスに基づいており、正しく計算し直すと97.5%の人が目標血中濃度に達するために必要な量は約8,895IU/日(現行の約15倍)になる。
- 複数の独立した研究チームが誤りを確認:アルバータ大学の研究(2014年)に続き、カリフォルニア大学サンディエゴ校・クレイトン大学のチームも独立して同じ結論に達しており、GrassrootsHealthの実データ(3,657人)も同様の問題を裏付けている。
- 誤りが指摘されても公式指針は未だ改定されず:この統計的誤りが発覚してから10年以上が経過しているにもかかわらず、RDAは600IU/日のまま変更されておらず、その結果として北米成人の推定40〜50%がビタミンD不足または欠乏状態にあると考えられている。