湿疹(アトピー性皮膚炎)は、肌の乾燥やかゆみ、炎症を繰り返す慢性的な皮膚疾患です。完全に治すことは難しいとされていますが、日常的なケアによって症状を和らげ、悪化を防ぐことは十分に可能です。アメリカでは人種を問わず10~13%の人がアトピー性皮膚炎を抱えているとされ、世界的にも非常にありふれた疾患です。
日本でも、アトピー性皮膚炎は国民的な皮膚疾患のひとつです。日本皮膚科学会のガイドラインでは保湿と外用薬が治療の基本とされていますが、ステロイド外用薬への不安から、自然由来のケアや生活習慣の見直しに関心を持つ人も少なくありません。
特に近年は、食事や腸内環境と肌の健康の関連が注目されるようになり、セルフケアの選択肢を知っておくことの重要性は増しています。Medical News Todayが紹介している記事では、科学的な根拠のある16の自然療法と生活習慣の工夫をまとめています。
ここでは、その内容をわかりやすく解説します。なお、これらはあくまで医師の治療を補完するものであり、症状がひどい場合は必ず専門医に相談してください。
■要点
- アロエベラ、コロイダルオートミール、ココナッツオイル、はちみつなど、抗炎症・抗菌・保湿作用を持つ天然素材が湿疹の症状緩和に役立つ可能性がある
- 食事の見直し(抗炎症食品の積極摂取)、刺激の少ない石鹸の使用、適切な入浴習慣、ストレス管理など、生活習慣の工夫も症状コントロールに重要
- これらの自然療法は医師の治療に代わるものではなく、重症の場合や感染が疑われる場合は必ず医療機関の受診が必要
肌に直接使える自然素材
1. アロエベラジェル
アロエベラは何世紀にもわたって傷の治療やスキンケアに使われてきた植物です。2017年の系統的レビューでは、アロエベラジェルに抗菌作用、免疫機能のサポート、傷の治癒促進といった効果があることが報告されています。湿疹で乾燥してひび割れた肌は感染しやすい状態にあるため、アロエベラの抗菌特性はスキンケアとして理にかなっています。
2. リンゴ酢
リンゴ酢は湿疹のホームケアとして注目されている素材です。全米湿疹協会は、リンゴ酢が湿疹に役立つ可能性があるとしつつも、酸によって肌を傷める恐れがあるため、必ず水で十分に希釈してから使うよう注意を促しています。原液のまま使うと化学火傷を起こす可能性があります。湿布や入浴に加えて使う方法がNEAで紹介されています。
3. 薄めた漂白剤入浴
一見危険に思えますが、ごく薄い漂白剤を使った入浴が湿疹の症状緩和に役立つ場合があると報告されています。漂白剤は肌表面の黄色ブドウ球菌を殺菌し、皮膚のマイクロバイオームを回復させるのに有効です。2018年のレビューでは、漂白剤入浴がステロイド外用薬や抗生物質の使用量を減らす可能性が示されました。ただし、別の研究では通常の入浴と比べて優位性がなかったという報告もあり、不快感や刺激がある場合はすぐに中止してください。
4. コロイダルオートミール
コロイダルオートミールは、オート麦を細かく挽いて煮沸し、肌に有効な成分を抽出したものです。2015年の研究では、コロイダルオートミールローションに抗酸化・抗炎症作用が確認され、乾燥、かゆみ、肌荒れ、かさつきの改善に効果が見られました。ぬるめのお風呂に粉末状のコロイダルオートミールを溶かして浸かるのがおすすめの使い方です。
5. 適切な入浴
入浴は肌に水分を補給する大切なケアであり、湿疹治療の重要な一部です。しかし、やり方を間違えるとかえって悪化させることもあります。熱すぎるお湯や冷たすぎるお湯の使用、刺激の強い石鹸の使用、入浴後に保湿をしないことは、すべて症状を悪化させる原因になります。ぬるめのお湯で短時間の入浴を心がけ、入浴後はすぐに保湿剤を塗ることが大切です。また、頻繁すぎる入浴も肌を乾燥させるため注意が必要です。赤ちゃんや子どもの場合、入浴は週1~2回で十分なことがほとんどです。
6. ココナッツオイル
ココナッツオイルには、肌に潤いを与える脂肪酸が含まれています。特にバージンココナッツオイルは、炎症を抑え、皮膚のバリア機能を改善する効果があるとされています。乾燥が気になる部分に薄く塗るだけで保湿ケアになります。
7. はちみつ
はちみつは古くから傷の治療に使われてきた天然の抗菌・抗炎症素材です。2015年のレビューでは、はちみつが傷の治癒を促し、免疫機能を高める効果があると報告されています。火傷や傷を含むさまざまな皮膚トラブルに有用とされ、湿疹で荒れた肌のケアにも活用できます。
8. ティーツリーオイル
ティーツリーオイルは、メラレウカの葉から抽出される精油で、抗炎症・抗菌・傷の治癒促進の特性が2012年のレビューで確認されています。ただし、湿疹の症状そのものへの直接的な効果については、まだ十分な証拠がないとされています。使用する場合はキャリアオイルで必ず希釈し、まずは小さな範囲でパッチテストを行いましょう。
生活習慣の工夫
9. 食事の見直し(抗炎症食品)
湿疹は炎症性の疾患であるため、食事で体内の炎症を抑えることが症状の軽減につながる可能性があります。抗炎症作用のある食品として、魚(オメガ3が豊富)、緑の葉野菜、豆類・レンズ豆、色とりどりの果物や野菜、ターメリック(ウコン)、シナモンなどが挙げられています。逆に、加工食品や精製糖を多く含む食事は炎症を悪化させるおそれがあるため、控えることが推奨されています。
10. 低刺激の石鹸・洗剤を選ぶ
ボディソープやクレンザーに含まれる合成洗剤は、泡立ちをよくする一方で肌の水分を奪い、湿疹を悪化させることがあります。無香料で低刺激の、泡立ちの少ないクレンザーを選びましょう。スクラブ剤など粒子の粗い製品も肌を刺激するため避けたほうがよいです。洗濯洗剤にも注意が必要で、刺激の強い化学物質が衣類に残り、肌に触れて症状を引き起こすことがあります。
11. 強い熱源を避ける
暖炉やヒーターのそばに座ると気持ちよいですが、湿疹を悪化させる原因になります。暖房からの熱と低い湿度が肌を乾燥させ、症状を悪化させるのです。また、寒い屋外から暖かい室内に急に入るといった急激な温度変化も悪化を引き起こしやすいことが知られています。室内の温度を一定に保つこと、そして加湿器を使って空気の水分を維持することが有効な対策です。
12. 寒い季節の肌の保護
冬の冷たく乾いた風は、肌の水分を奪い、湿疹のフレアを引き起こします。気温が低いときは肌の露出を減らし、衣類でしっかり覆うことが大切です。顔に湿疹がある人は、外出時にマフラーやスカーフで顔を覆うことも検討してください。冬場は特に保湿をこまめに行うことが症状の安定に直結します。
13. ツボ押し
ツボ押しは鍼治療と似ていますが、針を使わず自宅で行えるセルフケアです。2011年の小規模試験では、中程度から重度の湿疹を持つ15名の成人を対象に、肘にあるツボにBB弾のような粒を当て、週3回、4週間にわたって圧を加えたグループで、かゆみの有意な軽減と肌の状態の改善が報告されました。まだ小規模な研究段階ですが、副作用もなく手軽に試せる方法です。
14. 肌にやさしい衣類を選ぶ
ポリエステル、ナイロンなどの合成繊維や、ウールは肌を刺激しやすい素材です。また、硬い縫い目やファスナー、タグなども刺激の原因になります。湿疹のある人には100%コットンの衣類が最適とされています。コットンは柔らかく、通気性がよく、肌に負担をかけにくい素材です。そのほか、竹繊維やシルクも、肌にやさしい選択肢として挙げられています。
15. 掻かない工夫
かゆい部分を繰り返し掻いてしまうと、肌の治りが遅くなり、症状が悪化する悪循環に陥ります。無意識に掻いていることも多いものです。イギリスでは、外用薬の使用と「習慣逆転訓練」と呼ばれる認知行動療法を組み合わせることで、掻く行動を減らせたという報告があります。これは、掻いていることに気づいたら代わりの動作を行うトレーニングで、自宅でも実践できます。
16. ストレス管理
ストレスは湿疹の代表的な悪化因子のひとつです。全米湿疹協会は、ストレス対策として以下のような方法を推奨しています。無理な予定を断る勇気を持つこと、アルコールを控えること、自然の中で過ごす時間を作ること、定期的に体を動かすこと、そして気持ちを信頼できる人に話すことです。ストレスと湿疹は双方向の関係にあるため、肌のケアと心のケアを両輪で行うことが大切です。
赤ちゃん・子どもへの注意点
赤ちゃんや子どもの湿疹ケアでは、いくつかの追加の注意が必要です。厚着をさせすぎないこと(汗は湿疹を悪化させます)、乳児には掻き壊し防止のミトンを使うこと、刺激部分にこまめに優しい保湿剤を塗ること、無香料・アルコールフリーのベビーワイプを使用することなどが推奨されています。
リンゴ酢や漂白剤入浴については、赤ちゃんや子どもに使用する前に必ず医師に相談してください。コロイダルオートミール入浴は一般的に子どもにも安全とされていますが、目に入らないよう注意が必要です。また、入浴の頻度は多くなりすぎないようにしましょう。
まとめ
湿疹(アトピー性皮膚炎)には今のところ完治させる方法はありませんが、天然素材を使ったスキンケア(アロエベラ、オートミール、ココナッツオイル、はちみつなど)、適切な入浴習慣、抗炎症食品を取り入れた食事、低刺激の石鹸や衣類の選択、温度・湿度管理、ストレス管理まで、日常の中でできるケアは数多くあります。
大切なのは、これらの16の自然療法を「医師の治療の代わり」ではなく「補完するもの」として位置づけることです。症状が重い場合や、感染の兆候(膿、急な悪化など)がある場合は、迷わず皮膚科を受診しましょう。日々の小さなケアの積み重ねが、肌の状態を安定させる大きな力になります。
■出典
元記事:Medical News Today "16 natural remedies for eczema"
URL:https://www.medicalnewstoday.com/articles/324228
医学監修:Bukky Aremu, APRN(医療従事者によるレビュー済み)
主な参考文献:National Eczema Association、American Academy of Dermatology、各種系統的レビューおよび臨床研究