甲状腺は、体の代謝やエネルギー産生、免疫のバランスに深くかかわる重要な臓器です。
近年、自己免疫性甲状腺疾患(橋本病やバセドウ病など)の患者数は世界的に増加傾向にあり、その背景には遺伝的素因だけでなく、栄養状態や生活環境が複雑に絡み合っていることが明らかになりつつあります。
なかでも注目されているのが、ビタミンDとマグネシウムという2つの微量栄養素です。
ビタミンDは骨の健康だけでなく、免疫系の調節にも関与していることがわかってきました。
マグネシウムもまた、甲状腺ホルモンの合成や免疫細胞の活性化に欠かせないミネラルとして研究が進んでいます。
日本においても、ビタミンD不足は深刻な課題です。日照時間の少ない地域や、紫外線対策が一般化した現代の生活習慣のなかで、血中ビタミンD濃度が低い人は少なくありません。
マグネシウムについても、加工食品中心の食生活や精製穀物の摂取が増えるなかで、摂取量の不足が指摘されています。
甲状腺に不調を感じる方にとって、これらの栄養素がどのような影響を及ぼすのかは、とても気になるテーマではないでしょうか。
今回紹介するのは、コロンビアの研究チームが1028人を対象に実施した大規模な症例対照研究です。
ビタミンD(25OHビタミンD)とマグネシウムの血中濃度が、甲状腺の機能異常や自己免疫性甲状腺疾患のリスクとどのように関連しているかを、詳細に分析しています。
記事の要点
- ビタミンD欠乏(25OHビタミンD 20 ng/mL未満)の人は、甲状腺自己免疫疾患のリスクがおよそ8.8倍に上昇し、とくに甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)の陽性率が有意に高かった。
- マグネシウム欠乏(1.7 mg/dL未満)の人でも、甲状腺自己免疫疾患のリスクが約5倍に上昇し、甲状腺機能低下症(潜在性・顕性)との関連が認められた。
- ビタミンDとマグネシウムの両方が欠乏している場合、TPOAbとTgAb(抗サイログロブリン抗体)の両方の陽性率が顕著に高まり、甲状腺機能低下症のリスクはオッズ比3.81と有意に上昇した。