すい臓がんは早期発見が難しく、治療の選択肢も限られることから、医療の現場で長く大きな課題とされてきた病気のひとつです。
その理由のひとつに、がん細胞のまわりを硬い組織がぎっしりと取り囲み、抗がん剤が内部まで届きにくいという特徴があります。
そんな中、2026年5月にNature Cancer誌で報告された臨床試験が注目を集めています。
腎臓の病気などで長く使われてきたビタミンDの類似体「パリカルシトール」を標準的な抗がん剤治療と組み合わせたところ、がんを取り囲む盾のような組織がやわらぎ、治療が届きやすくなる可能性が示されたのです。
米国のダナ・ファーバーがん研究所とソーク研究所による共同研究で、ビタミンDという身近な栄養素に関わる仕組みが難治がんの治療を後押しするかもしれない、という点で新しい視点を与えてくれます。
今回は、この報告の中身をていねいに読み解いていきます。
記事の要点
- 2026年5月にNature Cancer誌で、ビタミンD類似体パリカルシトールを抗がん剤と併用する臨床試験の結果が報告され、すい臓がんの治療効果を高められる可能性が示されました。
- パリカルシトールはがん細胞を守る線維芽細胞の活性を抑え、抗がん剤や免疫細胞ががん組織の内部まで届きやすい環境をつくると考えられています。
- 試験では併用群の部分奏効率が42%と、偽薬群の9%を上回り、ビタミンD受容体が多く現れているがんほど生存期間が長い傾向がみられたと報告されています。