〜アミロイド凝集の抑制から神経突起の成長促進まで。天然成分ミルテノールの多面的な神経保護作用〜
アルツハイマー病は、記憶力や認知機能が徐々に失われていく神経変性疾患です。
脳内にアミロイドベータ(Aβ)と呼ばれるタンパク質の塊やタウタンパク質のもつれが蓄積することで、慢性的な神経炎症や酸化ストレスが引き起こされ、やがて神経細胞が広範囲にわたって死滅していきます。
数十年にわたる研究にもかかわらず、根治的な治療法はいまだ確立されておらず、世界中で新たな治療アプローチの探索が続けられています。
日本は世界でも有数の高齢化社会であり、認知症患者数は増加の一途をたどっています。厚生労働省の推計によれば、認知症の高齢者数は2025年に約700万人に達するとされ、その中でもアルツハイマー型が最も多くを占めています。
既存の治療薬は症状の進行を一時的に遅らせるものが中心であり、根本的な原因に作用する新しい治療法への期待は非常に大きいものがあります。
そうした中、古くからアロマテラピーやリラクゼーションに用いられてきたラベンダー(Lavandula angustifolia)から抽出される植物化学成分が、アルツハイマー病の分子レベルの病因に働きかける可能性があることが、最新の研究で示されました。
今回は、Thailand Medical Newsの記事と、浙江大学の研究チームが発表した査読付き論文をもとに、この発見の詳細をお伝えします。
記事の要点
- ラベンダー精油に含まれるフィトケミカルが、アルツハイマー病の原因であるアミロイドベータの凝集を抑制し、タウタンパク質の安定化、神経炎症の鎮静化、酸化ストレスの軽減という複数の経路で神経保護効果を発揮する。
- 浙江大学の研究では、ラベンダー精油成分のミルテノールがPC12細胞において神経突起の伸長を促進し、TrkAおよびIGF-1Rという受容体を標的とする神経栄養シグナルに作用する可能性が示された。
- 動物モデルでは空間記憶や学習能力の改善が確認されており、今後の臨床試験によりラベンダー由来成分がアルツハイマー病の多標的治療戦略に組み込まれる可能性がある。