アルツハイマー病は、世界中で最も多い認知症の原因疾患です。そしてひとつの大きな謎がありました。なぜ、女性のほうが圧倒的に多いのか。
実際に、認知症と診断される人の約3分の2が女性であることが知られています。従来は「女性のほうが長生きだから」という説明がなされてきましたが、それだけでは説明がつかない部分も多く、生物学的なメカニズムの解明が求められていました。
日本でも、認知症は社会的な最重要課題のひとつです。厚生労働省の推計では、2025年には認知症の高齢者が約700万人に達するとされ、その多くが女性です。
食生活の欧米化が進み、魚の消費量が減少傾向にある日本では、オメガ3脂肪酸の摂取量が以前より減っているという指摘もあります。
そうした中、Alzheimer's & Dementia誌に発表された研究が、この男女差の謎に新たな手がかりを提示しました。
キングス・カレッジ・ロンドンとクイーン・メアリー大学ロンドンの研究チームが、アルツハイマー病の女性の血液中で、オメガ3脂肪酸を含む不飽和脂質が顕著に減少していることを発見したのです。しかも、男性にはこの変化が見られませんでした。
記事の要点
- 841名の血液サンプルを解析した結果、アルツハイマー病の女性は血中のオメガ3を多く含む不飽和脂質が著しく低下していた一方、健康な男性とアルツハイマー病の男性のあいだには脂質組成にほとんど差がなかった
- 不飽和脂質のレベルが高い女性ほど認知機能テスト(MMSE)のスコアが良好で、神経変性や炎症のバイオマーカー(NfL、GFAP)も低かった
- 研究チームは、女性がオメガ3脂肪酸を十分に摂取することの重要性を強調しつつ、因果関係の確認には今後の臨床試験が必要だとしている