気分の落ち込みと栄養の話になると、亜鉛の名前はほぼ必ず挙がります。うつ状態の人は血中の亜鉛が低い傾向があるという報告は、これまで何度も繰り返されてきました。
ただ、そこから先はあまり語られてきませんでした。亜鉛は体のどこで、どうやって気分に関わっているのか。長いあいだ、その答えは脳の中だけに求められてきたのです。
2026年8月7日、栄養学の専門誌Nutrientsに、この問いを正面から扱ったレビューが掲載されました。蘭州大学などの研究チームによるもので、題は「亜鉛とうつ病:神経生物学的機能から腸脳相互作用まで」。脳の中の話を丁寧に押さえたうえで、もう一つの舞台として腸を描いています。
記事の要点
亜鉛は脳の中で興奮と抑制のバランス、BDNF(脳由来神経栄養因子)の発現、炎症の抑制に関わります。亜鉛を感じ取る受容体GPR39を欠いたマウスは、うつ様の行動を示しました。
亜鉛が足りないラットでは、抗うつ薬フルオキセチンが、亜鉛の足りた個体と同じようには効きませんでした。もとの亜鉛の状態が、抗うつ薬の働く条件に関わりうると述べられています。
亜鉛は腸のバリアと腸内細菌の構成にも関わり、うつと結びつけられてきた酪酸産生菌や短鎖脂肪酸の量が変わります。臨床試験では、1日25mgの元素亜鉛が約12週間使われています。