最新|脳を守る意外な存在 低用量リチウムが軽度認知障害に効く可能性

最新|脳を守る意外な存在 低用量リチウムが軽度認知障害に効く可能性

認知症は、日本で今もっとも深刻な医療・社会課題のひとつです。2025年には認知症患者数が約700万人を超えると推計されており、65歳以上の5人に1人が認知症になるとも言われています。

その中でも最も多いのがアルツハイマー型認知症で、根本的な治療法の確立が世界中で急がれています。現在承認されているアルツハイマー病の治療薬は症状の進行を一定程度遅らせるものですが、病気そのものを止めるには至っていません。

そのため、発症前の段階、つまり軽度認知障害(MCI)の段階からアプローチし、認知機能の低下を遅らせることができる薬や方法の研究が世界中で進められています。

そんな中で、意外な候補として注目を集めているのがリチウムです。リチウムは数十年にわたって双極性障害(躁うつ病)の治療薬として使われてきた薬ですが、脳を守る作用も持つ可能性が以前から研究者の間で議論されてきました。

2026年3月、ピッツバーグ大学の研究チームが、低用量リチウムが軽度認知障害を持つ高齢者の言語記憶の低下を遅らせる可能性を示す臨床試験の結果をJAMA Neurologyに発表し、大きな関心を呼んでいます。

記事の要点

  • 低用量の経口リチウムを2年間服用した軽度認知障害(MCI)の高齢者において、言語記憶の低下がプラセボ群と比べて遅かった。特にアルツハイマー病の指標であるアミロイドベータが陽性の参加者でより顕著な保護効果が見られた
  • 低用量リチウムは高齢者に対して慎重なモニタリングのもとで安全かつ忍容性が高いことが確認された。これは高齢者への使用に懸念があったリチウムの臨床応用に向けた重要な安全性データとなった
  • 今回はパイロット試験であり、結果はあくまで可能性を示すものにとどまる。研究チームは血液バイオマーカーでアミロイド陽性者を選んだうえでの大規模試験を次のステップとして計画している