ストレスはビタミンC泥棒:副腎が最も欲しがる栄養素が消えていく

ストレスはビタミンC泥棒:副腎が最も欲しがる栄養素が消えていく

※この記事は、旧Japan Healthアカウントで公開した記事を再掲載したものです。

このシリーズでは、ストレスが亜鉛やマグネシウム、ビタミンDといった栄養素を静かに奪っていくお話をしてきました。今回取り上げるビタミンCは、その中でも、ストレスとの結びつきがとりわけ深い栄養素です。

なぜなら、ビタミンCを体内で最もたくさん溜め込んでいる場所が、ストレス対応の司令塔である副腎だからです。

副腎は、ストレスホルモンであるコルチゾールを作る臓器です。そしてそのコルチゾールを作るとき、ビタミンCが欠かせない材料として使われます。つまりビタミンCは、ストレスと戦う最前線で大量に消費される栄養素なのです。

ストレスがかかるたびに、副腎は蓄えていたビタミンCを放出し、コルチゾールづくりに使っていきます。慢性的にストレスが続けば、その蓄えはどんどん目減りしていきます。

まるで、いちばん大切な金庫から先に中身が抜かれていくように、ビタミンCは消費されていきます。

そして前回のビタミンDのお話と同じように、ビタミンCとストレスの関係も一方通行ではありません。ストレスがビタミンCを奪う一方で、ビタミンCが足りなくなるとストレスへの抵抗力そのものが弱まります。

今回は、ストレスがどんな仕組みでビタミンCを奪っていくのか、そして奪われると体と心に何が起きるのかを、できるだけわかりやすく見ていきます。

記事の要点

  • ビタミンCは体内で副腎にもっとも高濃度に蓄えられており、コルチゾールやアドレナリンといったストレスホルモンを作るたびに材料として大量に消費されるため、慢性的なストレスのもとで急速に減っていきます。

  • ビタミンCが不足すると、免疫の力が落ちて感染しやすくなり、肌や血管をつくるコラーゲンの合成が滞り、気分の落ち込みや疲労が起きやすくなるほか、抗酸化の守りが弱まって体のダメージが蓄積しやすくなると報告されています。

  • ストレスとビタミンC不足はお互いを強め合う悪循環をつくるため、果物や野菜から積極的に摂ることと、消耗の激しいときにはサプリメントで補うことを意識するのが、現代人にとって心強い土台になります。

まず知っておきたい、ビタミンCという栄養素

ビタミンCは、多くの動物が自分の体内で作れるのに、人間とごく一部の動物だけが作れなくなってしまった、めずらしい栄養素です。

犬や猫は体の中でビタミンCを合成できますが、人間はその能力を失っているため、食べ物から摂るしかありません。これは、ビタミンC不足が人間にとって起こりやすいことを意味します。

ビタミンCの働きは多彩です。まず、体を酸化から守る強力な抗酸化物質として働きます。体の中では、活性酸素と呼ばれる攻撃的な物質が絶えず生まれていますが、ビタミンCはこれを消去し、細胞やDNAが傷つくのを防ぎます。

次に、コラーゲンの合成に欠かせません。コラーゲンは肌、血管、骨、関節、歯ぐきなど、体のあちこちをつくる土台となるタンパク質で、ビタミンCはその組み立てに必要な道具のような役割を果たします。

さらに、免疫細胞の働きを支え、鉄の吸収を助け、神経伝達物質やホルモンを作る場面でも活躍します。

そしてこの記事の主役となるのが、ストレスホルモンづくりへの関わりです。副腎は、体内でビタミンCを最も高濃度に蓄える臓器です。

研究によれば、副腎にはほかの多くの組織の何十倍ものビタミンCが含まれているとされ、それだけビタミンCが副腎にとって重要であることを物語っています。

ビタミンCは、コルチゾールを作る過程を支える補因子であり、さらに、興奮や集中をもたらすアドレナリンやノルアドレナリンといった物質を作るときにも必要とされます。ストレスに立ち向かうホルモンの多くが、ビタミンCの力を借りて作られているのです。

ストレスがビタミンCを奪う、いくつもの仕組み

では、ストレスはどうやってビタミンCを奪っていくのでしょうか。これまでの栄養素と同じように、経路はひとつではありません。

ひとつ目は、ホルモンづくりでの消費です。これがビタミンCの最大の特徴です。ストレスがかかると、脳から副腎へ指令が届き、副腎はコルチゾールを作り始めます。このとき、副腎に蓄えられていたビタミンCが材料として使われます。

興味深い研究があります。人間の副腎を調べた実験で、ストレスの指令となるホルモン(ACTH)が副腎に届くと、コルチゾールが出てくるより先に、まずビタミンCが放出されることが確認されました。

ビタミンCの放出がコルチゾール分泌の先ぶれになっていたのです。これは、ビタミンCがストレス反応に欠かせない一部であることを、人間で初めて示した発見でした。ストレスのたびにビタミンCが先頭を切って動員される、というわけです。

二つ目は、抗酸化のための消費です。ストレスは体内に酸化ストレスを生み出します。コルチゾールが高い状態が続くと、体内で活性酸素が増え、細胞やDNAがダメージを受けやすくなることが研究で示されています。

ビタミンCは、この酸化ストレスを消す主力の抗酸化物質ですから、火消し役として大量に駆り出されます。ストレスが強いほど、ビタミンCは消耗していきます。

三つ目は、尿や汗からの排泄です。ストレスがかかると、ミネラルと同じように、ビタミンCも尿や汗を通じて体の外へ出ていきやすくなります。心理的にも身体的にもストレスがかかると発汗が増え、そこからもビタミンCが失われます。

四つ目は、需要そのものの増加です。**ストレス下では、体のあちこちで修復や防御の作業が増えます。免疫を働かせる、傷ついた組織を直す、炎症をしずめる。こうした作業のどれにもビタミンCが必要ですから、ストレスが続くと体全体のビタミンCの必要量が跳ね上がります。

ある報告では、ストレスによってビタミンCの必要量が通常より大きく増えるとされています。入ってくる量が同じなら、需要が増えた分だけ足りなくなる計算です。

五つ目は、これまでのシリーズと共通する吸収の低下です。慢性的なストレスは腸内環境を乱し、栄養を吸収する力を落とします。ビタミンCは主に小腸で吸収されますから、腸が荒れれば、せっかく食べ物から摂ったビタミンCの取り込みも効率が下がります。

このように、ホルモンづくりでの消費、抗酸化での消耗、尿や汗からの排泄、需要の増加、吸収の低下と、ストレスはいくつもの経路から同時にビタミンCを奪っていきます。

とりわけビタミンCは、ストレスホルモンを作る現場そのもので大量に使われるという点で、ストレスとの結びつきが格別に強い栄養素なのです。

ビタミンCが奪われると、体と心に何が起きるのか

では、ビタミンCが奪われ続けると、私たちの体と心には何が起きるのでしょうか。

まず、免疫の力が落ちます。ビタミンCは、体を守る免疫細胞の働きを支えています。不足すると、感染症にかかりやすくなり、治りも遅くなる傾向があります。

ストレスを強く受けたあとや、燃え尽きたように疲れているときに風邪をひきやすくなるのは、ストレスでコルチゾールが免疫を抑えることに加えて、ビタミンCが枯れて免疫の支えが弱まっていることも関係していると考えられます。

ストレスと免疫低下と、ビタミンC不足は、しばしばひとつながりで起きています。

次に、コラーゲンが作れなくなります。ビタミンCはコラーゲン合成に必須ですから、不足すると肌や血管、歯ぐき、関節などの土台がもろくなっていきます。傷の治りが遅くなる、肌の張りが失われる、歯ぐきから出血しやすくなる、あざができやすくなる。

こうした変化は、ビタミンC不足の代表的なサインです。極端に不足した状態が長く続くと、歴史的に船乗りを苦しめた壊血病という病気に至ることも知られています。

現代でそこまで進むことはまれですが、軽い不足でも、肌や血管の健康はじわじわと影響を受けます。

そして、心の不調です。ビタミンCは、気分に関わる神経伝達物質を作る場面にも関わっています。不足すると、疲労感やだるさ、気分の落ち込みが現れやすくなることが報告されています。

ビタミンCが足りない状態の初期症状として、疲労や元気のなさ、抑うつ的な気分が挙げられています。心が晴れない、やる気が出ないといった状態の背景に、ビタミンC不足が隠れている場合もあるのです。

さらに、抗酸化の守りが弱まります。ビタミンCが減ると、酸化ストレスを抑える力が落ち、細胞や血管のダメージが蓄積しやすくなります。これは老化の進行や、さまざまな生活習慣の不調の土台にもつながると考えられています。

ビタミンCはまた、血管をしなやかに保ち、血圧の安定にも関わることが示されており、不足はこうした面にも影を落とします。

ここで思い出したいのが、双方向の悪循環です。ストレスがビタミンCを奪い、ビタミンCが減ると抗酸化や免疫、ホルモンづくりの支えが弱まって、ストレスへの抵抗力そのものが落ちていきます。

すると同じストレスでも体への負担が大きくなり、ビタミンCがさらに消費される。前回までの亜鉛、マグネシウム、ビタミンDの悪循環と同じ構図が、ビタミンCでも回っていきます。

日々の暮らしで意識したいこと

ここまでの話を踏まえると、ビタミンCをめぐって意識したいことが見えてきます。

まず、ストレスそのものを和らげることです。これまでもお話ししてきたとおり、ストレスを完全になくすことはできませんが、量を減らし、回復の時間を持つことはできます。

十分な睡眠、深い呼吸や軽い運動、自然の中で過ごす時間。こうした取り組みは、コルチゾールの過剰を抑え、ビタミンCが奪われる速さをゆるめてくれます。ストレスケアは、ビタミンCを守ることにも直結しています。

そして、ビタミンCをこまめに補うことです。ビタミンCは水に溶けるビタミンで、体に溜めておける量に限りがあり、使われたり排泄されたりしてどんどん出ていきます。だからこそ、一度にたくさん摂るより、毎日こまめに補うことが大切です。

ビタミンCは、果物や野菜に豊富に含まれます。柑橘類、いちごやキウイなどの果物、ブロッコリーやピーマン、じゃがいもなど、身近な食材から摂ることができます。加熱で失われやすいので、生で食べられるものは生で、加熱するなら手早く、という工夫も役立ちます。

そのうえで、ストレスの多い暮らしでは、食事だけで増えた需要をすべてまかなうのが難しい場面もあります。前述のとおり、ストレス下ではビタミンCの必要量が大きく増えますし、喫煙者や、感染や炎症を抱えている時期には、さらに多くのビタミンCが必要になります。

こうした消耗の激しいときには、サプリメントでビタミンCを補うことが、現実的で頼りになる選択肢になります。ビタミンCは水溶性で、推奨される範囲で続けやすい栄養素です。食事から、そして必要に応じてサプリメントから。この組み合わせが、ビタミンCを安定して保つ助けになります。

複数のサプリメントや機能性成分を組み合わせる場合は、成分の重なりに注意し、推奨される量を目安に続けると安心です。自分に合った形が分からないときは、栄養や機能性成分に詳しい専門家や管理栄養士などに相談しながら進めると、無理なく取り入れやすくなります。

これまでの栄養素と一緒に考える

このシリーズで取り上げてきた栄養素は、どれも単独で働いているわけではなく、互いに支え合っています。ビタミンCもその一員です。

たとえばビタミンCは、鉄の吸収を助ける働きがあるので、鉄分の多い食材と一緒に摂ると効率が高まります。また、抗酸化の現場では、ビタミンCはビタミンEと協力し合い、お互いを再生させながら体を守ります。

前回までの亜鉛、マグネシウム、ビタミンDと並べて考えると、ストレス下で消耗しやすい栄養素を、ばらばらにではなく、ひとつの土台として捉える視点が見えてきます。

ストレスは特定の栄養素だけを狙うのではなく、ストレス対応に関わる栄養素を全方位から消費していきます。だからこそ、これらをまとめて意識し、食事とサプリメントで底上げしていくことが、現代人の体を支える現実的な方法になります。

まとめ

ストレスがビタミンC泥棒だというのは、たとえ話ではありません。ビタミンCは体内で副腎にもっとも高濃度に蓄えられ、ストレスホルモンであるコルチゾールやアドレナリンを作るたびに、材料として大量に使われます。

ストレスの指令が届くと、コルチゾールより先にビタミンCが動員されるという研究もあり、ビタミンCがストレス反応の最前線にいることがわかっています。

そこに、抗酸化での消耗、尿や汗からの排泄、需要の増加、吸収の低下が重なり、慢性的なストレスのもとでビタミンCは急速に減っていきます。

そしてビタミンCが減ると、免疫が落ち、コラーゲンが作れなくなり、気分が沈み、抗酸化の守りが弱まる。さらにそれがストレスへの抵抗力を下げ、消費を加速させる悪循環を生みます。

多方面からストレスを受け続ける現代を生きる私たちにとって、ストレスを和らげる意識と、ビタミンCをこまめに補う習慣は、もはや特別なケアではなく、生活の土台そのものです。

果物や野菜から、そして消耗の激しいときにはサプリメントから。奪われる分をしっかり取り戻していく視点を、これまでの栄養素と一緒に、長く大切にしたいところです。

参考文献

* Padayatty SJ, Doppman JL, Chang R, et al. Human adrenal glands secrete vitamin C in response to adrenocorticotrophic hormone. Am J Clin Nutr. 2007;86(1):145-149.
* Marik PE. Vitamin C: an essential "stress hormone" during sepsis. J Thorac Dis. 2020.
* McCabe D, et al. The Effects of Psychological and Environmental Stress on Micronutrient Concentrations in the Body: A Review of the Evidence. Adv Nutr. 2022.
* Joergensen A, et al. Association between Urinary Excretion of Cortisol and Markers of Oxidatively Damaged DNA and RNA in Humans. PLoS One. 2011.
* Moritz B, et al. The role of vitamin C in stress-related disorders. J Nutr Biochem. 2020.
* Carr AC, Maggini S. Vitamin C and Immune Function. Nutrients. 2017;9(11):1211.
* 国立健康・栄養研究所「健康食品」の安全性・有効性情報(ビタミンC)
* 厚生労働省 日本人の食事摂取基準(ビタミンCの項)