がんは日本人の死因の第1位であり続けています。中でも大腸がんは、男女ともにかかりやすいがんの上位に位置し、近年も患者数が増加傾向にあります。
食生活の欧米化や運動不足との関連が指摘される一方、「食事で予防できるかもしれない」という視点からの研究も積み重ねられてきました。
果物や野菜に含まれるファイトケミカルが、がん抑制に関わることは以前から注目されていました。ポリフェノールやカロテノイドなどの名前を聞いたことがある方も多いかもしれません。
しかし、植物に含まれる成分は数千〜数万種にも及び、「どの成分が、どのようにがん細胞に作用するのか」を一つひとつ調べることは、従来の研究手法では時間も費用も膨大にかかるという大きな壁がありました。
そこに新たな突破口を開いたのが、人工知能(AI)の活用です。東京農業大学 総合研究所の大塚蔵嵩客員教授らの研究グループは、AIを使って膨大な科学論文や特許データを解析し、大腸がん細胞の増殖を抑制する可能性を持つ3つの植物由来成分を特定することに成功しました。
本研究の成果は、国際的な栄養学誌「Nutrients」に掲載されました。食とがん予防の関係に新たな光を当てるこの研究を、詳しくご紹介します。
記事の要点
- AIによるデータマイニングで、大腸がん細胞の増殖を抑制する可能性がある植物由来成分として「フィセチン(イチゴ等)」「グラブリジン(甘草)」「シリビニン(マリアアザミ)」の3種を特定した。
- 特定された3成分は、がんの発症・進行に関わるマイクロRNA(miRNA)の発現パターンを変化させ、細胞死や細胞老化などのがん抑制経路にも関わることが明らかになった。
- AIと実験生物学を組み合わせた本手法は、膨大な食品成分の中から機能性成分の手がかりを効率よく探し出す新たなアプローチとして、今後の食と健康研究の加速が期待される。