ビタミンDといえば、骨の健康に欠かせない栄養素というイメージが強いかもしれません。
しかし近年、ビタミンDが脳の発達や機能にも深く関わる神経ステロイドとしての側面を持つことが明らかになってきています。
脳内にはビタミンD受容体が広く分布しており、前頭前皮質、海馬、黒質、視床下部といった感情や認知を司る領域でビタミンDの活性化酵素が発現しています。
こうした生物学的背景から、ビタミンDの不足がうつ病、統合失調症、自閉スペクトラム症、アルツハイマー病、パーキンソン病といったさまざまな精神・神経疾患と関連する可能性が指摘されてきました。
日本はもともと日照時間の季節変動が大きく、紫外線対策への意識も高いことから、ビタミンD不足に陥りやすい環境にあります。
特に妊婦、子ども、高齢者といった脆弱な集団では、ビタミンDの充足状態が脳の健康にどう影響するかは重要な問題です。
このたびClinical Nutrition Open Science誌に発表されたシステマティックレビューは、90件の研究を統合し、ビタミンDの状態と幅広い精神・神経疾患との関連を包括的に検証しています。
論文タイトル
Vitamin D and brain health: A systematic review
記事の要点
- 90件の研究(メタアナリシス約30件、RCT含む原著研究約40件)を統合した結果、ビタミンD低値はうつ病、自閉スペクトラム症、ADHD、統合失調症、アルツハイマー病、パーキンソン病などの幅広い精神・神経疾患のリスク増加や症状悪化と関連していた。
- ビタミンD補充は、特にベースラインで欠乏状態にある人において、うつ症状の中等度の改善(プールSMD約-0.40)、自閉症児の症状改善、パーキンソン病の運動機能安定化など複数の疾患で有益な効果を示した。
- ビタミンDは神経精神疾患の一次治療としては推奨されないが、修正可能かつ低コストなリスク因子として、特にハイリスク集団(妊婦、小児、高齢者、精神科診断を持つ患者)における欠乏の評価と是正が包括的ケアの一部として考慮されるべきである。