健康診断で血清マグネシウムが基準範囲に入っていると、体の中にも十分にあるように感じます。ところが、血清にあるマグネシウムは体内全体の1%未満です。大半は骨や細胞の中にあり、細胞内ではATP、たんぱく質、核酸、膜などと結びついています。
そのため、血清値が基準範囲内でも、細胞内やミトコンドリアで利用できる量までは分かりません。この違いが重要になるのは、ミトコンドリアが細胞のエネルギー変換とカルシウム制御の両方を担うからです。
血液中の濃度だけを見ていると、ATPを使う現場や、ミトコンドリア膜を越えてMgが動く仕組みを見落とします。
ミトコンドリアとマグネシウムの関係も、「ATPをつくるために必要」という一文では収まりません。ATPを酵素が使える形に変え、ミトコンドリアから運び出せる形との切り替えを支え、カルシウムの流入を抑え、炎症時には細胞内の区画を移動する。
マグネシウムは、エネルギーの量と流れを同時に支えるミネラルです。
記事の要点
多くの酵素が利用するATPの中心形はMgATPで、マグネシウムとの結合と解離が、エネルギーを使う反応と膜を越える輸送をつないでいます。
ミトコンドリア内膜のMRS2とSLC41A3がMgの流入と流出を担い、適切なMg濃度がカルシウム過流入と膜電位の崩れを防ぎます。
血清Mgは全身や細胞内の量を正確に映しません。低値には意味がありますが、基準範囲内という結果は細胞内やミトコンドリアの充足を保証しません。