のどぼとけの少し下、首の前側に、蝶のような形をした小さな臓器があります。甲状腺です。ふだん意識することはほとんどありませんが、代謝や成長、エネルギーの使われ方を左右するホルモンを、休みなくつくり続けています。
その小さな働き者が、思っていた以上に大きな脅威にさらされているかもしれない。そんな問いを投げかけるレビュー論文が、2026年に発表されました。
イタリアの複数の研究機関のチームが、環境汚染物質と甲状腺機能の関係について、これまでの科学的根拠を幅広く見渡したものです。
日常的に触れている重金属や、プラスチックや食品包装に含まれる化学物質が、甲状腺の病気、さらには甲状腺がんに関わっている可能性がある。環境汚染が長い時間をかけて私たちの健康に及ぼす影響への懸念が、あらためて示されています。
今回はこのレビューの中身を追いながら、首もとの小さな臓器と、私たちを取り巻く環境との関係を見ていきます。
◼️記事の要点
カドミウム・水銀・鉛・ヒ素・クロムといった重金属は、食べ物や飲み水、大気から体に入り、何年も残って甲状腺の働きを妨げる可能性があると報告されています。
プラスチックや食品包装、調理器具に含まれるPFASやBPAなどの化学物質は、ホルモンをまねたり信号を妨げたりして、低い濃度でもホルモンの値を変えうると書かれています。
甲状腺がんは内分泌のがんで最も多く、世界で最も増えているがんの一つで、研究者は環境汚染物質も一因になっている可能性を指摘しています。