塩と聞くと、多くの人は食卓の調味料を思い浮かべるでしょう。しかし自然界では、塩は独自の生命を育てる環境でもあります。
海水よりはるかに塩分の濃い塩湖や塩田には、普通の生物が暮らしにくい条件を生き抜く微生物がいます。スペインとポルトガルの研究チームが注目したのは、そんな高塩環境を好む微生物がつくる赤いカロテノイドでした。
2026年7月に『International Journal of Molecular Sciences』へ掲載された研究では、この成分を多く含む抽出物が、肺がん、トリプルネガティブ乳がん、メラノーマの培養細胞に働きかけ、薬剤耐性を持つ肺がん細胞でも増殖を抑える力が落ちなかったと報告されています。
塩のある風景が、新しいがん研究の入り口になりました。
記事の要点
高塩環境に生きるHaloferax mediterraneiは、紫外線や酸化ストレス、濃い塩分から身を守る赤いカロテノイド、バクテリオルベリンをつくります。
バクテリオルベリンを多く含む抽出物は、肺がん、乳がん、メラノーマの培養細胞で増殖を抑え、活性酸素を最大約14倍まで増やしました。
薬剤耐性の肺がん細胞では、従来薬への耐性倍率が約20〜23倍だった一方、この抽出物への耐性倍率は0.75〜0.97で、効き方が保たれました。