私たちの心の不調と栄養素の関係について、科学はいま新しい段階に入りつつあります。
なかでもビタミンDは、骨の健康だけでなく気分や認知機能との関わりが長年議論されてきた栄養素です。
日本では血中ビタミンD濃度が不足している人が多いことが知られており、特に在宅勤務の広がりや日焼け対策の徹底によって、若い世代でも欠乏が指摘されるようになりました。
同時に、うつ病を抱える人の数も増加傾向にあり、心と体の両面から栄養を見直す動きが強まっています。
そんななか、2026年に神経科学の専門誌に掲載されたレビュー論文が、ビタミンD欠乏とうつ病をつなぐ2つの新しい経路を提唱しました。
これまで断片的に語られてきた知見を、神経免疫学という枠組みで統合した内容として注目を集めています。
記事の要点
- ビタミンD欠乏は、補体というタンパク質群を介した神経回路の異常な刈り込みを通じて、うつ病に関わる可能性が示されました。
- もうひとつの経路として、ビタミンD結合タンパク質(VDBP)とメガリン受容体を介した神経細胞ストレスシグナルが、抑制性ニューロンを傷つけることでうつ症状につながる仕組みが提唱されています。
- 臨床試験で結果がばらつく背景には、個人ごとのビタミンD状態や免疫状態の違いがあると考えられ、今後は生物学的な層別化に基づく研究が必要とされています。