怪我をしたとき、どのくらいで治るかは傷の深さや部位で決まると考えるのが普通です。しかし近年、心理学の分野では「心のあり方」が体の回復スピードに影響を及ぼすという研究が注目を集めています。
プラセボ効果はその代表例ですが、最新の研究はさらに踏み込み、私たちが時間をどう感じるかという、より抽象的な心の働きまでもが傷の治癒速度を左右する可能性を示しました。
日本では長時間労働やストレス社会の影響で、心身の不調を抱える人が少なくありません。気の持ちようという言葉は昔からありますが、それが単なる精神論ではなく、実際に体に作用するメカニズムがあるとしたら、私たちの健康との向き合い方は大きく変わるかもしれません。
2023年12月にNature Scientific Reportsに発表されたハーバード大学の研究は、そうした可能性を実験で裏付けた画期的な成果です。
記事の要点
- ハーバード大学の実験で、時間が多く経過したと感じた被験者ほど傷の治りが早いことが確認された。
- 実際の経過時間は同じ28分間でも、知覚された時間の長さによって治癒率に明確な差が生じた。
- 研究者のエレン・ランガー教授は、心と体を一つのシステムとして捉える「心身一体」の理論に基づき、思考が身体機能に直接影響すると提唱している。