私たちの腸のなかには、数えきれないほどの細菌がすみ、たがいに支えあいながら一つの生態系をつくっています。その顔ぶれの豊かさ、いわゆる「腸内細菌の多様性」が、体調や気分にまで関わることは、近年よく語られるようになりました。
では、その多様性はどうやって保たれているのでしょう。2026年、その舞台裏で意外な立役者が働いていたことが報告されました。主役は、細菌に感染するウイルス「バクテリオファージ(ファージ)」です。
ファージが細菌を壊すことで、なかに閉じ込められていたビタミンB12が腸のなかを巡り、ほかの細菌を育てていた。そんな微生物たちの静かなやりとりが見えてきました。
記事の要点
2026年に報告された研究で、細菌に感染するウイルス(ファージ)が細菌を壊すと、そのなかに蓄えられていたビタミンB12が外に放出され、B12を必要とするほかの細菌が育つことが示されました。
ファージ自身はB12をつくる遺伝子を持たず、細菌を壊して中身を解き放つ「運び手」として働いており、この受け渡しが腸内細菌の多様性を支えていると考えられています。
これは微生物どうしのやりとりを解き明かした基礎研究ですが、腸内の豊かな生態系を養う食事と、ヒトにとってのB12を食品からきちんととることの両方が、あらためて大切だと気づかせてくれます。