気分の落ち込みや意欲の低下に悩まされる方は、日本でも年々増えています。厚生労働省の調査によると、生涯のうちに何らかの気分障害を経験する人は15人に1人ほどとされ、決して他人事ではない身近な問題です。
治療の中心は抗うつ薬と精神療法ですが、薬の副作用や、思うように効果が出ないケースもあり、補助的な手段を探している方は少なくありません。近年、気分の問題とビタミンD不足との関連が繰り返し指摘されるようになってきました。
ビタミンDは骨の健康を支える栄養素として知られていますが、脳の中にもビタミンDの受容体や活性化酵素が広く存在し、気分の調整に関わる前頭前皮質や海馬、大辺縁系といった領域に影響を及ぼしているとする研究があります。
特に日本のように緯度が高い地域では、冬場の日照時間が短くなり、血中のビタミンD濃度が低下しやすい傾向が指摘されています。
今回ご紹介するのは、アメリカ北東部のニューイングランド地方にある精神科外来クリニックで実施された後ろ向き研究です。うつ病とビタミンD欠乏の両方を抱える成人を対象に、ビタミンDを補給したときにうつ症状がどの程度変化したかを、診療記録をもとに丁寧に検証しています。
論文タイトル
Vitamin D Supplementation in Adults with Depressive Disorder: A Retrospective Record Review of a Patient Panel
記事の要点
- ビタミンDを1日4000 IU補給した精神科外来患者39名で、うつ症状を評価するPHQ-9スコアが平均11.95点から5.92点へ有意に減少した。
- 平均減少幅は6.03ポイントで、事前に設定された臨床的に意味のある3ポイント低下という目標を大きく上回った。
- Cohenのd値は1.51と大きな効果量が示され、標準化された患者教育資料と組み合わせたシンプルな介入で臨床的に意味のある改善が得られた。