亜鉛と聞くと、味覚や免疫、あるいは血糖値を整えるミネラル、というイメージを持つ方が多いかもしれません。では、年齢を重ねて、しかも糖尿病で弱ってしまった心臓そのものを、亜鉛が立て直すことはできるのでしょうか。
2026年、栄養学の専門誌『Nutrients』に、その問いへ正面から挑んだ研究が報告されました。
実施したのはトルコの複数の大学による研究チームで、人間でいえば高齢の女性にあたる、生後18か月のメスのラットを使っています。高脂肪食と少量の薬剤で2型糖尿病に近い状態をつくり、そこへ硫酸亜鉛を6週間与えました。
その結果、心臓のはたらきが改善し、心臓の組織が硬く傷んでいく線維化が抑えられ、血糖値も下がったと報告されています。
さらに研究チームが注目したのは、亜鉛が血糖を下げるだけでなく、心臓の細胞の中で「長寿に関わる遺伝子のスイッチ」や「カルシウムを出し入れする仕組み」まで立て直していたという点でした。
血糖を整えるミネラル、という枠を超えて、亜鉛が老いた心臓の奥でどのように働いていたのか。今回はこの研究を、できるだけ原文に沿って読み解きます。
◼️記事の要点
高齢で糖尿病のラットに硫酸亜鉛を6週間与えると、心臓のはたらきの改善、組織の線維化の抑制、血糖値の低下が同時にみられたと報告されています。
亜鉛は血糖を下げるだけでなく、長寿に関わるSIRT1、糖を運ぶGLUT4、カルシウムを調節する仕組みまで立て直していたとされています。
もともと健康なラットへの補給では軽いストレス反応もみられ、亜鉛は不足や状態を見極めて補う栄養素だという読み方が示されています。