ビタミンDは骨の健康に欠かせない栄養素として広く知られていますが、近年の研究では心血管系や免疫機能、腎臓の保護など、骨以外のさまざまな働きにも注目が集まっています。
世界的にビタミンD不足は深刻な課題であり、全人口の約50%が不十分な状態にあるとされています。とりわけ脳卒中との関連については、血中ビタミンD濃度が低い人ほど脳卒中の発症リスクや重症度が高まることが、複数の大規模研究で明らかになってきました。
日本でも高齢化の進展に伴い脳卒中患者数は増加傾向にあります。厚生労働省の調査によると、脳血管疾患は依然として主要な死因・要介護原因の上位に位置しています。屋内中心の生活スタイルや日照時間の地域差もあいまって、日本人のビタミンD不足は決して他人事ではありません。
こうした中、脳卒中後の合併症として見過ごされがちな急性腎障害(AKI)とビタミンDの関係に焦点を当てた新たな研究が発表され、大きな注目を集めています。
論文タイトル
Vitamin D deficiency and risk of acute kidney injury after ischemic stroke: a propensity-matched cohort study
著者:Kuo-Chuan Hung, Li-Chen Chang, Yi-Chen Lai, Ming Yew, Ping-Hsin Liu, I-Wen Chen
掲載誌:Frontiers in Nutrition
記事の要点
- 脳卒中前にビタミンD欠乏(血中濃度20ng/mL未満)があると、脳卒中後30日以内の急性腎障害(AKI)発症リスクが55%上昇し、透析が必要になるリスクは2.33倍に達する。
- ビタミンD欠乏は30日以内の全死亡率(1.63倍)、ICU入室率(1.55倍)、肺炎発症率(1.48倍)の上昇とも関連しており、ビタミンD不足(20〜29ng/mL)でもAKIリスクは1.39倍と有意に高い。
- この影響は長期的にも持続し、1〜12か月の追跡期間でもAKIリスクは1.32倍、末期腎不全への進行リスクは1.69倍と、ビタミンD状態の重要性が改めて確認された。