亜鉛は多くの重要な生体機能に関わり、欠乏が様々な疾患の発症につながることが知られている。また、亜鉛は小腸Paneth細胞の分泌顆粒に高濃度で蓄積しているが、その意義は未だ明らかでない。
本研究は、亜鉛がPaneth細胞の腸内環境制御に及ぼす影響を明らかにし、糖尿病や喘息など亜鉛欠乏による疾患に対して Paneth細胞の機能を改善することによる新たな治療法や予防法の提案につなげることを目的とする。
研究の成果
小腸上の三次培養系であるenteroidを亜鉛欠乏
環境下で観察したところ、Paneth細胞が上皮から放出される様子が見られ、enteroidの成長もコントロールに比べて低下した。このことから亜鉛がPaneth 細胞の維持に重要であり、幹細胞ニッシェにも影響を与えることが明らかとなった。
また、亜鉛欠乏状態がPaneth細胞の顆粒分泌に与える影響をin uivoで解析したところ、亜鉛欠乏食を与えたマウスでは乏食投与から3日目以降で糞便中に含まれる分泌されたディフェンシン量が減少傾向を示し、亜鉛欠乏が粒分泌機能を低下させることが示唆された。

将来展望
本研究により亜鉛はPaneth細胞の維持に重要であり、その欠乏はPaneth細胞の幹細胞維持機能や顆粒分泌機能を低下させることを示唆した。
今後は、亜鉛がPaneth細胞からのディフェンシン分泌量を低下させることで腸内細菌叢の破綻(dysbiosis)を惹き起こすことや、亜鉛によって高次構造の異常なディフェンシンが蓄積し、Paneth細胞の小胞体ストレスにつながる可能性に注目して解析を進めようと考えている。
以上を通じて、亜鉛がPaneth 細胞による腸内環境の制御に影響を及ぼすことを明らかにし、疾患を生じさせるメカニズムを示すことで、亜鉛欠乏に対する予防法や治療法の応用に貢献できると考えている。
source
https://www.noastec.jp/web/archive/study/files/2018_W02.pdf