N-アセチルシステイン(NAC)は、もともとアセトアミノフェン(解熱鎮痛薬)の中毒に対する解毒薬として長年使われてきた成分です。
体内で強力な抗酸化物質であるグルタチオンの前駆体となるこの物質は、近年、脳や神経に関わる病気への応用に大きな期待が寄せられています。
アルツハイマー病やパーキンソン病、うつ病、統合失調症、自閉症スペクトラム障害など、幅広い脳疾患に対してNACが持つ複数の作用メカニズムが世界中の研究者から注目を集めているのです。
日本では、高齢化が急速に進むなか、認知症やパーキンソン病といった神経変性疾患の患者数が年々増加しています。
また、コロナ禍以降はうつ病や不安障害などメンタルヘルスの問題も深刻さを増しています。
こうした状況のなかで、比較的安価で入手しやすいサプリメントであるNACが、既存の治療に加える補助療法として新たな選択肢になりうるかどうか、関心が高まっています。
記事の要点
- NACは抗酸化作用、抗炎症作用、グルタミン酸調節作用など複数のメカニズムを持ち、アルツハイマー病やパーキンソン病、うつ病、統合失調症など幅広い脳疾患への効果が研究されている。
- NACは血液脳関門を通過して脳内のグルタチオン濃度を高めることができるため、脳の酸化ストレスやミトコンドリア機能障害、神経炎症に直接アプローチできる可能性がある。
- 精神科・神経科領域の臨床試験では、自閉症、統合失調症の陰性症状、強迫性障害、双極性障害などで有望な結果が報告されているが、大規模な確認試験はまだ不十分である。