治りづらい床ずれのメカニズムを解明

治りづらい床ずれのメカニズムを解明

群馬大学大学院医学系研究科皮膚科学の茂木 精一郎(もてぎ せいいちろう)准教授らの研究グループ(石川 治教授)は、群馬大学大学院医学系研究科口腔顎顔面外科学・形成外科学(横尾 聡教授)と山梨大学医学部皮膚科学講座(川村龍吉教授)、金沢医科大学総合医学研究所生命科学研究領域細胞医学研究分野(岩脇隆夫教授)との共同研究により、治りづらい床ずれ(褥瘡)のメカニズムを明らかにしました。

加齢による変化(脂肪・筋肉量の低下、骨突出、免疫能低下、知覚低下、創傷治癒力低下など)によって高齢者では褥瘡が生じやすく治りにくいことが知られています。超高齢者社会を迎えている我が国では、褥瘡患者数も増加し、褥瘡治療の医療費や人件費も増大しているため、褥瘡の予防・治療・管理の重要性は高まっています。

亜鉛は生体において必須な微量元素であり、高齢者においては摂取量不足、腸管の吸収率低下、生活習慣病の合併などによって亜鉛欠乏症が多いことが知られています。これまでの臨床の経験から、亜鉛欠乏によって、褥瘡が生じやすく治りにくくなると想定されていましたが、科学的に証明した研究は、これまでに報告されていませんでした。そこで本研究では、亜鉛欠乏状態における床ずれ(褥瘡)の発生と悪化の機序を解明することを目的としました。

亜鉛欠乏食または亜鉛含有食を 2 週間与えたマウスを用いて、マグネットを用いた皮膚の圧迫による褥瘡モデルを作製し、圧迫部に生じる床ずれ(褥瘡)の面積を比較しました。その結果、亜鉛欠乏マウスでは、皮膚の圧迫による床ずれ(褥瘡)の大きさが有意に増大し、且つ治癒が遷延することを見出しました。

【本件のポイント】
▶︎ 亜鉛欠乏マウスと正常マウスに褥瘡(「床ずれ」とも呼ばれる)を生じさせたところ、亜鉛欠乏マウスでは褥瘡のキズ(皮膚潰瘍)が大きくなりやすく、治りづらいという結果を示した。

▶︎ 亜鉛欠乏による褥瘡の増大、治りづらさは、亜鉛の経口補充によって改善した。

▶︎ 亜鉛欠乏マウスの褥瘡部位を調べたところ、正常マウスと比べて、血管量が少なくなっており、その結果生じた低酸素によって誘導される酸化ストレスも増加していた。このことから、亜鉛欠乏によって生じる酸化ストレスの増加が治りづらい床ずれを起こすメカニズムの一つと考えた。

▶︎ 亜鉛欠乏マウスの褥瘡部位では、細胞外 ATP 量の増加と、ATP を分解する CD39 を発現している皮膚ランゲルハンス細胞数が減少していた。これらの結果から、ATP分解酵素が、亜鉛欠乏によって低下・機能不全となるため、細胞外 ATP が分解されず増加して炎症が強く引き起こされると考えられた。この機序も床ずれが治りづらい原因の一つと考えた。

▶︎ 今回の報告は、亜鉛欠乏によって褥瘡が大きくなりやすく、治りづらくなることと、亜鉛の経口補充で褥瘡の改善がみられること、そして、それらのメカニズムを初めて明らかにした報告である。

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