食・栄養・健康を、深く読む。
栄養素の代謝図鑑METABOLIC ATLAS
栄養素の代謝図鑑
栄養素は、からだのどこで、どう使われるのか。
材料、酵素、補酵素のつながりを、経路図でたどります。
01 / 酸化・還元
グルタチオンの合成と再生
3つのアミノ酸からつくり、使った後は還元力で戻す。
経路をひらく →一枚の図から、反応のつながりへ。
まず全体図で位置関係をつかみ、次に流れ順の説明へ。図内の短いラベルと、酵素や栄養素についての詳しい説明を分けて読めます。
この図鑑は生化学的な仕組みを整理するものです。栄養素の補給による改善効果や、個人の不足を判定するものではありません。
酸化・還元
グルタチオンの合成と再生
つくる、使う、戻す。3つのアミノ酸と還元力がつなぐ、細胞内の循環。
通常は読みやすい大きさで表示。全体を見渡すときは「図を拡大」→「全体表示」。
合成は細胞質、再生も細胞質を中心に表示。赤字は関わる栄養素、破線は補因子や前駆体としての関わりです。合成でできたGSHは細胞内のプールへ加わり、「2 GSH」は1分子が複製される意味ではありません。細かな反応式は下で確認できます。
図の読み方
黒い矢印は物質や反応の流れです。色は読み分けのための区分で、善し悪しや不足量を表していません。GCL=グルタミン酸–システインリガーゼ、GSS=グルタチオン合成酵素、GPx1=グルタチオンペルオキシダーゼ1、GR=グルタチオン還元酵素です。図中央のNADPH → NADP+は、GRが再生に使う還元力を示します。
経路をたどる
グルタミン酸とシステインをつなぐ
グルタミン酸–システインリガーゼ(GCL)が2つの材料を結び、γ-グルタミルシステインをつくります。ATPを使い、マグネシウムが触媒反応を助けます。出典
グリシンを加えてGSHをつくる
グルタチオン合成酵素(GSS)がグリシンを加えます。この段階でもATPとMgが関わり、GSH 1分子の合成に合計2分子のATPを使います。できたGSHは既存の細胞内プールへ加わるため、下の「2 GSH」は1分子が複製される意味ではありません。出典
過酸化水素を処理する
代表例のGPx1は、2分子のGSHを使って過酸化水素を水へ変えます。GSH同士はジスルフィド結合でつながり、GSSGになります。セレンはGPx1の活性部位に組み込まれています。全てのGPxに同じ説明を当てはめてはいません。出典
NADPHの還元力で再生する
GRはGSSGを2分子のGSHへ戻します。GRが保持するFADはB2由来。反応基質のNADPHはNADP+へ酸化され、ペントースリン酸経路など別の代謝で再びNADPHになります。ナイアシン(B3)はNADP(H)の前駆体です。出典
反応式で確かめる
Glu=グルタミン酸、Cys=システイン、Gly=グリシン、Pi=無機リン酸。合成式のプロトンは簡略化しています。GRの反応式では、図内で省略したH+も記しています。
栄養素との接点
| 栄養素 | どこで、どう関わるか |
|---|---|
| 3つのアミノ酸 | グルタミン酸・システイン・グリシンは、GSHの分子に組み込まれる材料です。 |
| マグネシウム | GCL・GSSによる合成の補因子。GSHに組み込まれる材料ではありません。 |
| セレン | 代表例GPx1の活性部位のセレノシステインに含まれます。GRや直接合成へは配置しません。 |
| ビタミンB2 | GRが保持するFADのもと。 |
| ナイアシン(B3) | NADP(H)のもと。実際の反応ではNADPHが酸化されます。 |
B2・B3・セレンそのものを反応ごとに使い捨てるという意味ではありません。B6由来のPLPが関わるシステイン供給は間接経路なので、本図には詰め込んでいません。
区画ごとのNADPH供給、GSHの輸送・分解・抱合、他の利用先は省略。補給による疾患改善を示す図ではありません。
次回の経路
次回はビタミンDの合成と活性化を取り上げます。
出典・更新日
一次研究と公式の反応データベースを照合。原著は抄録・書誌情報の確認を含み、公式反応データベースと照合しています。
- Reactome:GCLによる第1段階
- Reactome:GSSによる第2段階
- Polekhinaら:ヒトGSSの構造とMg(1999)
- Reactome:過酸化水素の処理
- UniProt:ヒトGPx1とセレノシステイン
- Reactome:GRによる再生・FAD
- NIH ODS:リボフラビンとFAD/FMN
- NIH ODS:ナイアシンとNAD/NADP
- Reactome:ペントースリン酸経路
- Misra・Griffith:ヒトGCLの発現・精製(1998)
- UniProt:ヒトGCLCのMg結合注釈
- Mullenbachら:ヒトGPxの活性部位セレノシステイン(1987)
- Scottら:ヒト赤血球GRの精製と性質(1963)