最新|ロングCOVIDの運動のつらさは血管と関連:血管を広げる酵素の相棒はビタミンC

最新|ロングCOVIDの運動のつらさは血管と関連:血管を広げる酵素の相棒はビタミンC

上腕に血圧計のようなカフを巻き、血流を一時的に止めてから放します。せき止められていた血液が一気に流れ込むと、血管の内側を覆う細胞が反応して、動脈が広がります。その広がり方を超音波で測る検査が、血流依存性血管拡張反応(FMD)です。

この検査を使って、新型コロナウイルスに感染してからおよそ3年たった成人を調べた研究が、2026年に Physiological Reports で報告されました。ロングCOVIDで運動がつらい人(10人)と、感染したがロングCOVIDにならなかった人(11人)を比べています。

記事の要点

  • ロングCOVIDの10人は、感染から約3年後も、健康な対照より血管の広がり方(FMD)が低いと報告されました。
  • 最大酸素摂取量も低く、血管の広がり方が大きい人ほど運動能力が高いという関係がロングCOVIDの群にだけ見られました。
  • 血管を広げる一酸化窒素をつくる酵素は、ビタミンCが元の形に戻す補酵素を使います。ロングCOVIDの人では、アルギニンとの併用が試されています。

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3年後も、血管の広がりだけが弱かった

研究は症例対照研究です。参加者は21人と少なく、チーム自身も、結果は仮説を生むためのもので、より大きな研究での確認が必要だとしています。ロングCOVIDの群は、急性期に入院した人が60%、酸素投与を受けた人が60%で、肥満の人も7人と、対照より多い集団でした。

運動能力を測る心肺運動負荷試験では、最大酸素摂取量がロングCOVIDの群で19.6、対照で24.3(mL/kg/分)でした。予測値に対する割合は61.1%と77.0%で、ロングCOVIDの群が低くなりました。

一方、心臓の超音波検査では、従来の指標も、心筋の仕事量の指標も、2つの群で差がありませんでした。差が出たのは血管です。FMDはロングCOVIDの群で明らかに低く、血流が戻った直後の勢い(ずり速度)も弱くなっていました。

対照との違いは、体格にもありました。ロングCOVIDの群は平均年齢が49歳と47歳でほぼ同じでしたが、BMIは32.9と27.2で、ロングCOVIDの群が高くなっています。感染からの期間は、40か月と35か月でした。ロングCOVIDの群では、心筋の仕事量の指標(GWI)はBMIが高い人ほど低い関係がありましたが、FMDとBMIの間には、どちらの群でも関係が見られていません。

さらに、ロングCOVIDの群では、FMDが高い人ほど最大酸素摂取量が高いという関係がありました(r=0.68)。この関係は対照では見られていません。著者らは、心臓よりも末梢の血管に、運動のつらさの土台がある可能性を挙げています。ただし、これは横断的な関連で、血管の機能が原因だと示した結果ではありません。

つまり、心臓は保たれていて、筋肉へ血液を送り込む血管の「広がる力」が弱いことが、運動のつらさと並んで見つかった、という報告です。

血管を広げる合図をつくる酵素と、その相棒

考察では、持続する血管の傷害には、一酸化窒素(NO)が使える量の低下、慢性の炎症、酸化ストレスが関わるとされています。一酸化窒素は、血管の内側の細胞が出す、血管をゆるめる合図の分子です。ここで、栄養素がどこに触れるのかを見ていきます。

一酸化窒素は、eNOS(内皮型一酸化窒素合成酵素)という酵素が、アミノ酸のアルギニンからつくります。この酵素が働くには、テトラヒドロビオプテリン(BH4)という補酵素が必要です。BH4は、酵素が反応を回すための「電子の運び屋」にあたります。

BH4は壊れやすい分子です。酸化ストレスで生じるパーオキシナイトライトという反応性の高い分子が、BH4にいち早く反応して、その形を変えてしまいます。BH4を失ったeNOSは、一酸化窒素の代わりに活性酸素(スーパーオキシド)を出すようになります。これが「eNOSの脱共役」です。

ここにビタミンCが触れます。培養した牛の血管内皮細胞を使った研究では、パーオキシナイトライトに反応してBH4が変わった中間体(BH3ラジカル)を、ビタミンC(アスコルビン酸)がBH4へ還元して戻すと報告されています。ビタミンCは、BH4を元の形に戻す役を担っています。

この研究では、BH4とビタミンCをあらかじめ加えた細胞で、パーオキシナイトライトによる脱共役が防がれたことも確かめられています。一方、ビタミンCは、BH4の酸化を完全には防げないとも書かれています。守り切るのではなく、壊れた分を元に戻す役割です。

別の研究グループは、ブタの大動脈の内皮細胞にビタミンCを取り込ませて、同じ酵素の働きを測っています。細胞内のビタミンCが増えるほど、一酸化窒素の産生が増え、eNOSの最大反応速度は約50%高まりました。アルギニンを受け止める強さ(Km)は変わっていません。

この効果は、BH4を十分に加えた条件や、BH4を増やす物質を与えた細胞では見られませんでした。ビタミンCが効くのは、BH4が足りない状況に限られる、という読み方ができます。酵素の材料のほうではなく、補酵素の側に触れていることを示す結果です。

つまり、血管を広げる合図を出す酵素は、ビタミンCに助けられた補酵素がないと、合図の代わりに有害な分子を出してしまいます。

アルギニンとビタミンCを28日間とった試験

この仕組みを、ロングCOVIDの人で試した臨床試験があります。イタリアの研究チームが2022年に Nutrients で報告した、単盲検のランダム化試験です。持続する疲労があるロングCOVIDの成人46人が、アルギニン1.66gと、リポソーム化したビタミンC 500mgを1日2回、28日間とりました。対照はプラセボです。

28日後、6分間歩行距離はサプリ群で30m伸び、プラセボ群では伸びませんでした。FMDはサプリ群が14.3%、プラセボ群が9.4%で、サプリ群のほうが大きくなりました。疲労が続いていた人は、サプリ群で2人(8.7%)、プラセボ群で21人でした。

同じ試験の血液の解析では、ロングCOVIDの人は一酸化窒素の利用しやすさを表す指標が低く、サプリ後にアルギニンの血中濃度などが増えたと報告されています。ただし、試験は1施設・小規模で、著者ら自身が「予備的な結果」としています。また、アルギニンとビタミンCを組み合わせて使っているため、ビタミンCだけの効果は、この試験では切り分けられていません。

ビタミンC単独の効果は、メタ解析でも一様ではありません。2015年の解析では、1日500〜2,000mgのビタミンCを2週間以上とった試験を合わせると、血管の機能は小さく改善した(SMD 0.25)と報告されています。効果の大きさは、集団によって変わるとされています。

試験で使われた量は、ビタミンCで1日1,000mg、アルギニンで1日3.32gです。食事だけでとる量とは別の話で、食卓の目安としては使えません。

つまり、血管を広げる酵素の材料と相棒をまとめて補った試験で、血管の広がりと疲労が改善したという報告があり、ビタミンCはその相棒にあたります。

日本の食卓ではどうか

アルギニンは、肉・魚・大豆などのたんぱく質食品に含まれるアミノ酸です。令和6年の国民健康・栄養調査では、20歳以上のたんぱく質の平均摂取量が男性78.0g、女性65.9gで、食事摂取基準(2025年版)の推奨量(男性65g、女性50g)を上回っています。

一方、ビタミンCは平均が男性85mg、女性86mgで、推奨量の100mgを下回っています。合図の酵素の材料は足りていて、それを守る相棒のほうが、平均では目安に届いていない、という並びです。

目安に近づける量は、成分表で確かめられます。日本食品標準成分表(八訂)では、黄色いキウイフルーツが100gあたり140mg、いちごが62mgです。黄色いキウイなら100gで、平均との差の15mgを大きく超えます。いちごなら100gで、およそ6割をまかなえます。

ビタミンCは水に溶けやすく、熱でも減りやすい栄養素です。果物や野菜は、生のまま、あるいは短い加熱で食べるほうが、量を保てます。サプリで高用量をとる場合は、含まれる量と目的を確かめてからにするのが安心です。

まとめ

ロングCOVIDで運動がつらい人では、感染から約3年たっても、血管の広がり方が弱いことが、運動能力と並んで報告されました。心臓の指標には差がなく、仕事の主役は血管側にある可能性が示されています。

血管の広がりを担う一酸化窒素は、アルギニンを材料に、BH4を補酵素として酵素がつくります。ビタミンCは、酸化で変わったBH4を元に戻します。ロングCOVIDの人にアルギニンとビタミンCを組み合わせた小規模な試験では、血管の広がりと疲労の改善が報告されました。

日本人のビタミンCの平均摂取量は、推奨量にわずかに届いていません。黄色いキウイやいちごのような果物を、毎日の食卓に1品足すことが、相棒の分子を切らさない現実的な手段になります。

参考文献

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* 厚生労働省. 令和6年国民健康・栄養調査報告. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/eiyou/r6-houkoku_00001.html
* 文部科学省. 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年. https://fooddb.mext.go.jp/