膵臓が出したインスリンの量と、腕の血管で測れるインスリンの量は、同じではありません。膵臓から出たインスリンは、まず門脈という血管を通って肝臓に入り、その最初の通過でかなりの量が取り除かれるからです。
2013年に医学誌『The Journal of Clinical Investigation』で、この「肝臓での取り除き」に、インスリンと一緒に放出される亜鉛が関わっているという研究が報告されました。
日本の研究グループによるもので、膵臓のβ細胞で亜鉛の運び役ZnT8を欠いたマウスでは、膵臓からのインスリン分泌は増えているのに、全身の血液中のインスリンは低いままでした。
ただし、中心はマウスと培養細胞の実験です。その後の人の遺伝子研究では、肝臓での取り除きが変わるという点は支持されず、ZnT8の働きが弱い人ほど糖尿病になりにくいという結果も出ています。インスリンの貯え方から、肝臓での行方、そして食事の亜鉛までを順に見ていきます。
記事の要点
- インスリンの粒には亜鉛が詰められ、分泌のときに一緒に外へ出ます。
- マウスでは、この亜鉛が肝臓でのインスリンの取り込みを抑え、全身へ届く量を保っていました。
- 亜鉛はインスリン6個を束ねる留め金でもあり、日本人男性の亜鉛摂取は推奨量ぎりぎりです。
この先では、マウス実験でみられた肝臓によるインスリンの取り込みや、ヒト遺伝子研究における結果の違い、さらには食事から亜鉛をしっかり摂るための具体的なアプローチについて詳しく解説しています。