「妊娠中は葉酸を摂りましょう」という言葉を、耳にしたことがある方は多いはずです。神経の発達に欠かせない栄養素として、母子手帳にも記載されるほど広く知られています。
ところが、葉酸には複数の形があり、その選び方が子どもの発達にまで影響しうるという研究が、2026年9月に医学誌『Nutrients』で報告されました。
対象になったのは、妊娠中に葉酸の働きを妨げる自己抗体を持つ母親たちです。この自己抗体があると、一般的な葉酸(葉酸)がうまく働かず、胎児の脳へ十分な葉酸が届きにくくなる可能性が指摘されています。
今回の研究は、化学的に一歩進んだ「活性型」の葉酸を使った場合、子どもの発達がその後どうなったかを、就学前の年齢まで追跡したものです。当初のパイロット試験では2、3歳の時点までしか確認できていなかった効果が、そのまま持続するのか、それとも時間とともに薄れていくのかは、これまで分かっていませんでした。
結果は、栄養素の「量」だけでなく「形」が発達に関わりうることを示す、意外性のある報告でした。
記事の要点
- 葉酸受容体への自己抗体を持つ母親から生まれ、24から30か月時点で自閉症の症状がなかった子どものうち、妊娠中に活性型葉酸(ホリナート)を摂った母親の子ども8人は、就学前(平均45.4か月)になっても全員が自閉症の診断を受けていませんでした。
- 一方、標準的な葉酸を摂った母親の子どもは7人中5人(71.4%)が就学前に自閉症の診断を受けており、活性型葉酸群の1人(11.1%)との差は統計的に意味のあるものでした。
- 研究チームは、この自己抗体を持つ妊娠において、活性型葉酸を用いることが、子どもの神経発達を守る手立てになりうると位置づけています。
この先では、葉酸受容体に対する自己抗体がなぜ脳への葉酸供給を妨げるのかという具体的なメカニズムや、通常の葉酸と活性型葉酸が細胞に取り込まれる経路の違い、そして今後の臨床研究に向けた課題について詳しく解説しています。