塩分をめぐる話は、減らすべきか、そのままでよいかという一方向の問いになりがちです。ところが、2026年にFood Research Internationalへ掲載された研究は、食塩を極端に制限した場合と極端に増やした場合を、同じ条件のマウスで比べました。焦点は血圧ではなく、記憶と腸内細菌、腸内細菌がつくる代謝物、そして脳です。
結果は単純な「少ないほどよい」という形ではありませんでした。正常量の食塩を与えた群と比べると、低塩群と高塩群はいずれも作業記憶と物体認識記憶が低下し、海馬のシナプス関連タンパク質も減少しました。ただし、低塩群と高塩群の悪影響が同じ大きさだったと断定できる比較結果は、確認できた原著抄録には示されていません。
この研究から読み取れるのは、食塩の両極端が異なる生物学的パターンを伴っていたことです。人の適正量を決める試験ではなく、一般的な減塩を否定する結果でもありません。極端な条件で何が動くのかを、栄養素と腸脳相関の視点から見ていきます。
記事の要点
正常塩分群に比べ、低塩群と高塩群のマウスはいずれも作業記憶と認識記憶が低下しました
高塩群では炎症性の変化、低塩群では微生物の代謝出力低下が目立ち、同じ経路とは限りません
0.1%と8.0%という極端な飼料条件を、人の推奨減塩や適正摂取量へ直接置き換えることはできません
この先では、正常群との比較、短鎖脂肪酸と海馬の変化、研究から言えることと言えないことを整理します。