手術台に上がる前の採血で調べるのは、たいてい血液型や感染症の有無です。けれど、その中にもうひとつ、手術後の痛みの強さを左右していたかもしれない数値が隠れていたとしたらどうでしょうか。乳がんの手術を受けた人たちを追ったある報告に、そんな見過ごされがちな栄養素の存在が記録されていました。
エジプトの大学病院で、全身麻酔のもとで乳房切除術を受ける患者184人を対象に行われた前向き観察研究です。手術前の血中ビタミンD濃度で参加者を二つのグループに分け、術後の経過を追ったところ、痛みの強さにも、手術中や手術後に使われた鎮痛薬の量にも、はっきりとした差がついていました。
同じ手術を受けているのに、なぜここまでの差が生まれていたのでしょうか。
記事の要点
- 全身麻酔で乳房切除術を受けた患者184人を、手術前の血中ビタミンD濃度で不足群90人と十分群94人に分けて追跡した前向き観察研究です。
- 不足群は十分群に比べて、術後24時間以内に中等度から重度の痛みを経験する確率が3倍高く、術後の悪心も多く報告されています。
- 術中のフェンタニル使用量は平均8μg、術後のトラマドール使用量は平均112mg、不足群のほうが多く必要とされていました。