生後半年を過ぎたころ、赤ちゃんの便のにおいや色がふっと変わる瞬間があります。母乳やミルクだけだった腸の中身が、離乳食を境に一気に模様替えを始めるからです。この「腸内細菌が入れ替わっていく速さ」に、実は子どもによってかなりの差があることが、長期追跡調査でわかってきました。
なかには、生後1年ほどで発達のペースが緩やかになったまま、3歳になっても足踏みを続けている子どもたちがいます。腸の中の顔ぶれがなかなか多様にならず、限られた菌だけで役割をまかなっている状態です。
この「発達が早い段階で止まってしまう」パターンが、将来の1型糖尿病のリスクと結びついているのではないか。そんな報告が、アメリカとヨーロッパの共同研究チームから発表されました。
遺伝的にリスクが高いとされていた子どもたちを対象に、生後6年間にわたって腸内細菌の動きをこつこつ追い続けた、長期の大規模な研究です。赤ちゃんのお腹の中で、こんなにゆっくりとした違いが積み重なっていくとは、なかなか想像しにくいものです。
記事の要点
- 1型糖尿病の遺伝的高リスク児887人を対象に、生後6年間で1万2,000件超の便サンプルを追跡した前向きコホート研究で、腸内細菌叢の成熟パターンが明らかになりました。
- 生後早期に成熟が止まり、その後も追いつかなかった「早期停滞型」の子どもは、1型糖尿病やその前段階の自己免疫反応を発症するリスクが、順調に成熟した子どもの約3倍でした。
- このリスクは遺伝的背景に関わらず一貫してみられ、単発の腸内細菌検査ではなく繰り返しの追跡調査によって初めて明らかになりました。
この先は、3つの腸内細菌の成熟パターンの内容、早期停滞型と1型糖尿病リスクの関係、遺伝的背景との関わり、母乳から離乳食へ切り替わる時期の腸内細菌の働きの違い、そして研究結果をどう受け止めればよいかを詳しくお伝えします。